speech:秋田典昭
(大阪府立北野高等学校校長、六稜同窓会名誉会長)
さて、本日久しぶりに母校を訪ねてこられた先輩諸氏の中には、母校のあまりの変わりように驚かれた方も多かっただろうと思います。ご覧のように卒業式、入学式、さらには先輩による文化講演会や野球の全国大会優勝祝勝会を初めとする北野の歴史を刻んだ様々な記念すべき集会が行われた旧の講堂は跡形もなく、本当に草一本もないさら地に変わってしまいました。旧の本館も一部分が撤去され、視聴覚教室、化学、音楽、書道教室などのあった第一新館も撤去されて、すっかり寂しくなりました。
同窓会の皆様には、こうした様々な思い出の残る昔の学び舎がなくなるということは耐え難いことでございましょうが、昭和6年の名建築も老朽化が進み、先般の阪神淡路大震災のような震災が今度起これば耐えられないという状態になったのは真に残念な事でございます。
しかしながら、形は変わっても六稜精神は先輩から後輩へと脈々と受け継がれ、少しも揺らぐ事はないと確信しています。
その改築工事は今のところ順調に進んでおります。新しくできる教室棟の基礎には87本の杭が打ち込まれる予定です。これは第一期工事の約五分の一の本数です。二期工事は、言わば容物としては空っぽの箱のような普通教室を二階三階にそれぞれ9教室作る工事ですから杭の本数も少なくなっています。今後、工事に特別な支障が生ぜず、予定の年度、これは環境整備も含めますと、今から2年半後となりますが、その予定通りに終わってくれることを皆願っている次第です。2年半後の平成15年、2003年、本校創立130年の記念すべき年の4月には、改築工事がすべて完了し、名実共に新しい世紀を担う有為の人材を世に送り出す新生北野として出発する予定でございます。
こうした新しい出発に向けて教育環境の整備が着々と進められる中で、同時に教育の内容面においても古き良き伝統を継承しながら新しい時代に相応しい北野の教育を目指してその改革を進めているところです。この教育内容の改革についても先輩の皆様方に大きな支えをいただいています。その具体的な内容については、ある程度まとまった段階で、皆様方にご報告申し上げたいと思っていますが、その一部を申し上げますと、今年から進路部とPTAの共催で、大学セミナーと大学体験入学(大学見学会)という事業を始めました。いずれも生徒に大変好評でございました。
大学セミナーは、六稜祭の終わった直後に、心の切り替えも兼ねて、自分の進路を真剣に考えさせる狙いで、5日間連続で実施しました。放課後の2時間ぐらいの時間を使い、京大・阪大・神戸大の文系・理系の先生方に来て頂いて、学部学科の紹介と学問の楽しさ・素晴らしさについて語っていただきました。学年を問わず自由参加としましたが、各講座とも200名近い出席者があり、5日間で約1000名の者が参加しました。
大学見学会の方は、東大、それから京大の総合人間学部、法学部、工学部、理学部、阪大の文学部、工学部で実施しました。全部で168名の参加がありました。生徒は大学の実際の空気に触れて大きな刺激を受けたようです。
この新しい二つの事業は、PTAの皆様にはもちろんですが、実は陰で同窓会の皆様にかなりの部分を支えていただきました。講演も大学での案内も全部ボランティアで、いろんな先輩方にご無理を言いました。この場をお借りして改めて同窓会の皆様にお礼を申し上げます。こうした、大学との連携は、北野のこれからを考える時、大きなポイントになるであろうと思います。この大学との連携、いわゆる高大連携を今後一層強化していきたいと考えております。そういうわけで、現在大学に勤めておられる先輩方の中で、「よし、協力するから連絡せよ」とおっしゃって頂きますとたいへんうれしく思わせていただくわけでございます。どうかよろしくお願いします。
次に、ケントウッド高校との国際交流も早いものでもう十年を迎えました。今年も4名の生徒が教員に引率されて大いに交流の輪を広げてきました。また、ケントウッド高校からも4名の生徒と先生を迎えました。この運営に当たっては、同窓会の皆様の浄財による国際交流基金に助けて頂いています。
部活動はどの部も相変わらず元気に活発に行っていますが、山岳部が連続7年全国大会出場を果たしています。秋の大会ではサッカー部が5回戦まで勝ち進み、6回戦で金光第一と対戦し、ベスト16で涙を呑んでいます。ラグビー部は、1回戦清水谷、続いて2回戦は私学の星翔と勝ち進み近々3回戦で啓光学院と対戦の予定です。野球部は茨木東に続いて、2回戦は豊中と対戦。コールド勝ちをしましたが、3回戦で東海大仰星に敗れました。
吹奏楽部は昨年に続いて地区大会でゴールド金賞をもらい、中央大会に出ております。オーケストラ部はその力が認められて、今年の近畿芸術文化祭のオープニングに代表で演奏する予定です。
三年生は進路の最後の追い込みにかかっていますが、今年センター試験に出願した者は在籍者の97%でした。今年の春は入試の成績が今一つ芳しくなかったので、来春は北野ここにありと大いに気を吐いてくれることを願っています。
母校の近況について簡単にご報告申し上げました。
皆様にお礼申し上げます。今年は大変暑いうえに、工事の騒音で学習環境としては最悪であったのですが、素晴らしいクーラーを同窓会の皆様にご寄贈いただき、その暑い夏を乗り切ることができました。私も暑い中、七月に教室で三年生の特別補講をやってしみじみとそのありがたさを思わせて頂きました。
平成12年10月29日