六稜同窓会会長
稲畑勝雄(56期)
【いなはた・かつお】1926年生。1947年京都帝国大学法学部卒業。稲畑産業(株)取締役社長。住友製薬(株)取締役相談役。大阪商工会議所副会頭。関経連・日本貿易会・大阪工業会各常任理事ほか。ポルトガル共和国大阪駐在名誉領事。日仏文化協会副会長。大阪日仏協会会長。
1991年フランス、レジオン・ドヌール勲章受章。
顧みますれば、昨年は母校創立120周年という大きな節目を迎える時期に、故鴻池藤一前会長のご不例という事態が出来いたしましたが、河崎晃夫副会長を中心に関係各位の絶大なご協力を得て、10月30日の記念式典と行事を盛会裡に挙行することができました。
本年3月9日、鴻池先輩のご訃報に接しましたことは痛恨の極みで、ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げる次第であります。
さて、あらためて申すまでもなく、六稜同窓会は、18世紀以来大阪の町に根づいた自主・自由の学問の土壌の上に、難波御堂に門を開き、幾多の人材を世に送り出してきた母校と共に歩みつづける永遠の大コミューニティであります。
一切の利害関係を排し、職業・信条などの違いに捉われることのない点で、集団としての連帯感は緩やかなものではありますが、その反面、単なる情緒の域にとどまることなく、地域とのヨコのつながりと年代を超えたタテの人間関係の両面において、社会の負託に応えていく力をもつと同時に、世間からもそのように期待されている存在であると申せましょう。
また、さきの大戦後占領軍による学制改革の暴挙が実施された結果、後続を断たれた旧制高校の同窓会がいまや消滅に瀕し、高校の場合も大半が新制・旧制に分裂している状況の中で、六稜同窓会が新旧一本の体制を堅持している少数派に属することは、この際、運営の基本に関わる特質として、全会員に再度ご認識頂きたい事柄であろうと思われます。
今般、河崎先輩に引き続き東京六稜会会長のご兼務をお引き受け頂くと共に、新たに新制第二回の卒業生である山本次郎氏に副会長ご就任をお願いしたのも、このような流れに沿ったものとご理解頂ければ幸いであります。
近年、世界情勢が激変をつづける中で、日本が果たすべき役割が各分野に亘って問い直され、広い視野と豊かな国際感覚をもつ人材の育成が国民的な課題となっていることはご承知の通りであります。
創立百周年記念に同窓会が寄贈した大阪城の梅林が広く市民に親しまれていることは先ほど触れたヨコのつながりの一例でありますが、このような情勢に照せば、同窓会の基金の一部を在校生の国際交流に当てるなど、タテのつながりを強化していく企画についても、今後一層のご理解とご援助を得て推進するべきでありましょう。
今春の異動で校長のご交替があったほか、同窓会事務局長が代わられ、常任理事にも若干の変更が予定されておりますが、時は移り人は変っても、北野高校と六稜同窓会は恰も車の両輪の如く手を携えながら、時代の要請にふさわしい活動を継続していくことと確信いたします。
終りに、重ねて同窓会の諸事業に関するご理解とご参加・ご支授をお願いいたしますと共に、会員の皆様のますますのご多幸とご清祥をお祈り申し上げまして、会長就任のごあいさつといたします。