六稜会報Online No.27(1994.5.20)


    「北野高等学校国際交流基金」の創設

    肥塚敏彰(72期)
    大阪府立北野高等学校教頭


       現在、日本の社会の各方面において、「国際化」ということが言われている。教育の面においても、たとえば、AET(外国人英語指導助手)が一昨年(1992年)から全府立高校に配置または招請されるようになった。また、本年(1994年)から英語科のカリキュラムの中にオーラルコミュニケーションが入ってき、生徒に英語によるコミュニケーション能力育成を図ることになっている。

       北野高校は4年前(1990年3月)、アメリカのワシントン州シアトルの近くのケントウッド高校を本校体育科篠原教諭が訪問し、嘉納治五郎の「自他共栄」の書を贈られて以来、ケントウッド高校と毎年教員、生徒が相互にホーム・ステイしながら訪問しあう交流を続けている。
       本年も3月に教員1名(英語科 林裕子教諭)と生徒2名がケントウッド高校を訪問した。6月には本校にケントウッド高校の教員と生徒を迎える予定である。

       次に今春訪米した林教諭の手記を紹介する。


         今春、ケントウッド高校を訪問する機会を与えて項き、生徒二人と共に、それぞれホームステイをしながら学校に通った。
         ワシントン州は、合衆国の中でも比較的落ち着いた所であるが、その中にあるケントも、山と森と湖に囲まれた美しい場所で、閑静な住宅街が点在している。

         アメリカでは高校までが義務教育なので、大学進学を目指している生徒、就職を希望する生徒、それから身体・精神に障害を持つ生徒など様々な生徒が一緒に学んでいる。学校で行われる授業は知識の詰め込みというよりも、問題解決能力を養うことを目的としているようだった。生徒は学校という社会の中で、様々な人々と関わり合いながら、ひとりの人間として生きていくことを学んでいるのである。日本の高校生よりもたくましく見えた。

         わずか2週間余りの短い滞在ではあったが、観光旅行では決して経験することのできないアメリカの高校生活を、実際にこの眼で見、肌で感じることができた。
         この滞在は英語を教える私にとって貴重な財産となることであろう。

         最後に、このような貴重な機会を与えてくださった北野高校の教職員の皆様、並びに経済的援助をしてくださった六稜同窓会の皆様に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。


       このような国際交流の実績を踏まえて、創立120周年記念事業の一つとして、「北野高校国際交流基金」の創設をとりあげていただいた。今後、この基金が設けられたならば、教員・生徒の団際交流をケントウッド高校に限らず広げていけたらと考えている。


    原典●『六稜會報』No.27 p.11