六稜会報Online No.27(1994.5.20)


    【記念音楽会】
    高らかに響く『第九』 熱演に“ブラボー”



       指揮の豊島和史氏(81期)の手が降りた途端、拍手の渦がフェスティバルホールの舞台と客席を包み込んだ。
       「ブラボー」の声が再三起こる。1時間半に及ぶ演奏を終えて、オーケストラも合唱団も上気した顔に一様に満足感をたたえていた。最年長85歳の川瀬勇氏(39期)が紹介されると再び大きな拍手……。オーケストラも合唱もオール北野で、という文字通り記念すべき「記念音楽会」は、こうして大成功のうちに幕を閉じた。
       10月30日が近づくにつれ、新聞各紙が「北野OBによる第九」の記事を掲載するようになった。ほとんどは大阪の地方版であったが、日経は文化欄に六稜楽友会会長の野口藤三郎氏(53期)が「OB・現役〈第九〉で心一つ」の見出しで報じ、大きな反響を呼んだ。事務局にも、今からでも入場申込みが可能かとの問い合わせが多くなった。現役生徒1・2年生と、4月で締切った予約者で満席状態のため、断わらざるを得なかったのは誠に残念であった。

       前日には吹田のメイシアターの中ホールで最終練習が行われ、4人のソリストとの初顔合わせ、声合わせとなった。雨の降る中、仕事帰りの人、子供連れの人など、午後6時前から集まりはじめ、オーケストラの音合わせ、合唱団の発声練習、起立の練習のあと、通して演奏が行われた。客席は合唱団員とその家族や友人でほぼ満席だ。その夜は9時まで練習が続けられた。
       いよいよ当日、出演者の朝は早かった。午前9時には全員集合。着替えをすませて、合唱団はロビーで発声練習。オケは音合わせ。学校式典の間は映像を見るゆとりも。休憩時間に舞台裏に入る。12時45分、開幕。野口楽友会会長のユーモアあふれるあいさつのあと、森繁久弥氏(45期)より贈られた「指揮棒」が豊島氏に手渡され演奏は始まった。

      ベートーヴェン「交響曲第九番二短調作品125」
      指揮:豊島和史
      ソリスト:田中千恵子、竹本節子、小林正夫、木川田誠(旧教員)
      オーケストラ:六稜交響楽団=90人
      コーラス:六稜混声合唱団=380人

       この日、舞台に上がった人、スタッフとして最後まで裏方でがんばった人、そして客席にいたすべての人が、この日のことを忘れないだろう。
       後日、参加した人達から、ぜひまたやりたいと言う声が届いている。このまま終わりにしたくないというのは、関係者すべての気持ちである。必ずや、その思いは実現されるであろう。


      プログラム


    原典●『六稜會報』No.27 p.6