六稜楽友会会長
野口藤三郎(53期)
本年10月、北野創立百二十周年記念祭に「フェスティバルホール」で「六稜交響楽団・六稜混声合唱団」が演奏する、ベェトォベンの「第九交響曲」の最初の合奏練習の日だった。
正午すぎ、私は、阪急電車十三駅の改札口を出て、母校に向った。人品卑しくない老若男女が、みな同じ方向へ向って歩いて行く。この方々は、皆、「第九交響曲」の練習にかけつけて戴いたオーケストラとコーラスの人たちだった。
遠くは埼玉・東京・名古屋から、旅費自弁で、年齢も大正15年卒業の先輩から、平成5年の卒業生まで、管弦楽団70・合唱団180。総計250余名!
練習は、第一楽章から始まって、第四楽章を午後4時30分に終った。凄い迫力だ。
北野創立以来、母校の歴史で初めて本格的なベェトォベンの「第九交響曲」が講堂に響きわたった。しかも我々卒業生の手によって…。
言い知れぬ感動に胸を掩われ、私は不覚にも、泪を押えることが出来なかった。
世に稀なものがそこにあった。現時、華麗な演奏は数多い。だが、溢れる感動を受ける演奏は実に稀である。それが、ここにあった。この感動の一瞬を、私は生涯忘れ得ない。