NGOでの仕事がひと段落し始めた頃、UNMIK(UN Mission in Kosovo、国連コソボ暫定行政機構、ウンミックと読みます)がスタッフを募集していることを知りました。暫定行政機構というのは、つまりコソボの状況が落ち着いてくるまでは国連が暫定的に政府機能を担いましょう、というものです。こちらでも縁があって、NGOでの仕事が終わると同時にUNMIKのスタッフになりました。「ドキュメンテーション・オフィサー」という職種でミトロビッツァという町の市役所に配属されました。どのような仕事かと申しますと、市役所に本来あるような色々な書類、つまりドキュメントを何でもよいので捜し出してきてひと所に集め、ドキュメンテーション・センターという場所を作って、市役所機能を回復させる土台づくりをする、と言えばよいでしょうか。つまりこの仕事が必要とされている背景には、紛争によって役所の機能はもちろんのこと、住民情報などの基本的な市民情報もどこかに消えてしまっていましたので、誰がこの町に住んでいたのか、誰と誰が夫婦でその子どもは誰かというようなことが全然分からないという状況だったのです。市役所に行って「住民票ください」と言っても「あなたの住民票はありません」という状況ですね。これでは行政サービスの再開どころではありません。