実は今年2001年は木簡発掘100年なんですよ。1901年にスウェン・ヘディンとオーレル・スタインが発掘したんです。1898年が甲骨の発掘で、敦煌も20世紀の発掘。でも、古代史研究は20世紀の発掘から始まるのではない。宋代からの積み重ねがあって、清朝の考証学があって、その後のほうにいるのが王国維や羅振玉であるわけですからね。金石学(青銅器の銘文や石刻文を研究する分野)がずっと行われてきて、甲骨学や木簡学も金石学の範囲に入るいう人もおる。甲骨学や木簡学を独立させるのはそれは違うというわけ。かといって素材から言ったら、それぞれ違うんやし。ただ文献以外のドキュメントを使うことでは一緒ですが。
ヨーロッパでも羊皮紙、パピルス、それから木簡があるんです。ローマにも木簡がありますよ。竹簡と木簡は一緒でね、ただ竹が産出できない地域があるからね。それから、竹のどっち側に書くかというと、内側に書くのです。外側に皮のついたままのが出てくることがある。竹を割って内側に書くとなると細いんです。それに比べて、木はどこにでもあるし、幅があるから使いやすいんですね。字の書きようも違いますね。
初めての中国訪問 |
中国の場合は発掘されてから文献がでるまでが長くてね。出てから20年くらいとか。78年に中国に行ったとき、72年位に発掘されたものの整理してましたが、まだ文献になっていないです。功名争いいうこともありましてね、だれが出すかというね。これはいやです。フェアじゃない。討論会でこっちが推論を言うてても、向こうは新資料を知ってるかと思うとね。
こういう研究をするには現物見ないといけない。まだ中国に行けなかったころですから、大英博物館にスタインのコレクション見に行きました。1972年、ケンブリッジに留学していた時です。これはよかったね。僕の折り返し点やね。それで焼き物に出会った。こんなもんあるかと、僕ら今まで西洋史を誰が何を教えてくれたんやと思いましたね。
やっぱり現物見んとあかんと思いますよ。昔の本には昔の人の指の温もりが残ってると言いますねん。たいてい、えーって言われますけどな。それに、たまに思わぬおまけが見つかることもある。書き込みやら、はさんであった紙が見つかったりね。これはデジタル資料だけでは出逢えないことです。