「灘酒造」に入社して…当然、平社員からのスタートです。課長を少しはやりましたが45、6歳まで平社員時代で、その後いきなり専務になり、48歳で社長になりました。
父は業界団体の役員や西宮市の監査委員を16年も務めるなど、会社の中よりもむしろ外で忙しい人でしたから、実務的なことはほとんど番頭さんやわれわれ息子たちに任せっきり…の状態でした。ですからボクは平社員の頃から「社長」の仕事をやらされてはいたのです。実際、怒るということのない人で、好きなようにやらせてくれました。実に立派な人だと思います。いずれは会社のどこかに父の銅像を建てようと思っています(笑)。
当社は父が会長、長男のボクが社長、次男が専務で三男が常務…完全に家族経営の会社です。勿論やりにくいこともあります。特に他の社員たちにとっては、やりにくいかも知れません。ただ…家族ぐるみというのは、やりやすい面も多いです。弟たちに対しては甘くなる時もありますが、出来るだけ厳しくしようと思っています。厳しくすればするほど会社にとってはプラスになるんです。
業界の中で当社は「兄弟でうまくやっている」会社という評価を貰っています。酒造業界でこのように兄弟経営している例は極めて稀なんです。「長子相続」「一子相伝」というのが酒屋の家訓みたいなものですから…兄弟で一緒にやるというケースはほとんどありません。業界300年の歴史の中では、結局いざこざで揉めてガタガタになったという実例がたくさんあるんです。
しかしボクは仲良くうまくやっていけるのであれば、父子4人でやっていくことはいいことだと思っています。それは武器にもなります。難しいですけどね。
ようやく最近になって、やっと社長業が身についてきた…というか、経営のコツみたいなものを掴みかけてきたような気がしています。これまでさんざん重ねてた失敗が、やっと武器になったかな…と思う今日この頃です。