コソボ州内の診療所、病院、検査センター、薬局などの医療機関は70-80%は、破壊され、また、マザーテレサ生誕の地ということで、800個所のマザーテレサ協会の運営する医療相談所とでもいうべき施設があったようですが、これも80%以上破壊されているということがWHOのレポートに書かれています。ペア市の約500床のペア病院は破壊されておらず、無給の医師、医療従事者達により細々と運営されていました。わたしは3回この病院を訪れて、詳しく内部を案内してもらい、何人かの医師と話しをしましたが、ベッドの実働は30%くらいでした。医療機器も古く、壊れたものは修理されず、消耗品にも事欠くありさまで、30年以上前の日本の小さい病院を思わせる設備内容でした。医療従事者ばかりが多く、無給とはいえ暇を持て余しているようでした。戦闘、爆破による怪我人などの発生はすでにほとんど無くなっており、ごく日常的な救急患者への対応は可能になっているようで、医師、検査技師などは当直勤務で対応しているとのことでした。
職員が無給であるという理由は、コソボの医療はごく限られたプライベイトのクリニック以外は病院も診療所も公立の運営であったようで、解放後、全ての管理者がKFOR、と国連になっており、医療関係は全てWHOの管理下にあります。従って、ペア病院の管理者は現在WHOから派遣されたイタリア人のジョバンニという医師が担当しています。そして、WHOの計画の下に病院再建が行われるとのことです。日本のGHQ占領時代の初期のように、全ての権限はWHOにあり、コソボの人達はプラン作りには参加しているようですが、決定権はないのが現状のようです。給与・人事についてもそうです。後にジョバンニ医師と話した時、9月からやっと正式に医療従事者を採用することになり非常に忙しいと話していましたので、10月くらいから安くても本採用された職員には給料が支払われることになると思います。ジョバンニ自身の任務はあと一ヶ月で終わり後任の管理者と交代するということも話していました。
バラニ村で
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こんな話を聞くと、セルビア人の抑圧から開放されたとは言え、自由、自治にはまだ程遠く、今後いろいろな苦労があるだろうなと非常に複雑な思いがしました。NATOと国連が引き上げた後、本当にアルバニア人による自治が平穏に始まるのだろうか。本当の意味での民主的行政が行われるのだろうか、大いに疑問です。日本もGHQ占領下の7年間に植え込まれたコンプレックスを戦後50年を経て未だに解消できないのですから…。
要するに、医療はもとより政治、経済、軍事、教育など全ての分野が国連とNATOにより支配され、今後3年間くらいの間、彼らの立てたプラン通りにやるということです。
勿論、現地の長老達の意見を尊重するような体裁は取っています。たとえば医療については、コソボにもともとあった医師会とでもいうべき地元の医師達との協議の上でプランが決定されたという体裁にはなっており、このプランからはずれる援助は一切認めないということになっています。
従って、NGOの医療部門に対しても、戦前の医療レベル以上の援助はしてはならないという通達がなされています。コソボに集まった多くのNGOも、この臨時占領政府(?)の確定プランが出るまでにいかに自分達の旗を立て、その実績を認めてもらうようにしのぎを削っている訳です。
MeRUは、先述のけなげなお嬢さん達の必死の努力により、かろうじてバラニという田舎にMeRUの旗を立てることに成功し、かつ、この地の診療所を拡大することに成功しつつあり、WHOに公認される可能性が出てきているというのが実態です。