博物館さがの人形の家 (右京区嵯峨鳥居本仏餉田町)
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人形の保存で一番気を使うのは湿度管理なんです。奈良の正倉院にも参考意見を伺いに行きました。嵯峨野は年間を通して湿度が60%程度で安定していることが決め手となり、現在地に落ち着いたわけですが、当初は保存のことしか頭になくて一般公開までは考えていませんでした。
1988年に博物館「さがの人形の家」を開館。翌'89年には財団法人イケマン人形文化保存財団を設立して、京都府の第14号登録博物館としての認可も受けました。館長を務める家内は50歳を過ぎてから「美学を基本から学びたい」ということで大学に行き直し、学芸員の資格を取得しています。彼女が美術、僕が民俗学の立場から互いに補いあいながら研究、運営を続けています。
嵯峨人形 |
こうした傾向が判るのも、僕が「系譜を整えること」を重視しているからです。何事も一点豪華主義では底が知れています。物事を体系立てて見るためには、それなりの数が必要なんです。
先日も、有職故実を専門にしている学芸員さんと知り合いになりまして、ウチの館の収蔵品をお貸ししたのですが、ナマの実物を数多く見ているという点においては、そこらへんの学者さんよりも素人の僕のほうが、より正しい知識を持っていて圧倒的に理論的なんですよ(笑)。
また、人形を1体や2体といった単品で置いている館もありますが、比べ物になりません。ウチはストーリーを下敷きにした展示を心がけています。ストーリー(系譜)が解ってこそ研究論文が書けるのです。
今、僕も人形の本を書いています。数多くの人形を見て、正しい理論を知っているから書けるのです。また書くように強く勧めてくださる方もいるのですけれど。
ですが、本当に大変そうな顔をしていたら、本当に潰れてしまいます(笑)。その意味で僕はドラマを見ないのです。七五調のリズミカルな歌舞伎世話物や大掛かりな舞台の芝居などは好きなのですが、ドラマなんかを見ると自分がスグにその中に感情移入してしまうので、悲しくなってしまいます。だから新劇は絶対に見ない。現実的なテレビドラマも見ないんです。
いつもにこやかに皆さんと接しているおかげで、世の中が自然に回って助けていただいているのですね。