笹部桜の普及に努めた久野友博氏によって30本ほど寄贈されました。生前の笹部氏と親しい繋がりのあった文芸春秋社の薄井恭一氏の紹介で、多くの人に見てもらえ、管理のしっかりしているところと言う条件で、多摩森林科学園、神代植物公園とともに薄井氏の菩提寺でも有るこの名刹が選ばれました。
日蓮聖人終焉の地でもある大伽藍を有するこの寺にはもともと千本以上のソメイヨシノが植えられていますが、新しく入った笹部桜はその中にあって境内のそこかしこ、訪れる人の比較的身近に接することの出来る場所に植えられています。ネームプレートも付いていてすぐそれとわかります。水遣りなどの手入れも充分にされている様子で幹も葉も健康そのものでした。聞くところによると管長さんが笹部桜の風情を愛してやはり特別の気遣いをされているとのこと。
少し内輪話になりますが……
筆者と同期の新井将敬代議士が昨年二月に亡くなり、四月にその四十九日の法要が本門寺で行われました。同期の友人達が数名出席しましたが、位牌の傍らに桜の一枝が活けてあるのが、どう見ても笹部桜に似ている。読経が終ったあと管長さんに訊ねてみるとやはり笹部桜であった。「故人のために……それにしてもこの花を笹部桜とよくお分かりになられた……」と驚かれ、「実は我々六稜78期では『笹部桜を顕彰する会』というのがありまして……」というやりとりがあり、しばらくは桜談義に花が咲き、湿っぽい法要の場が和やかな雰囲気に一変し、思わぬ場面での予期せぬ繋がりに一同不思議な縁を感じたとのことでした。