【第75回】将棋と医学研究の接点

六稜トークリレー Talk Relay【第75回】2010年6月12日

三善英知さん@92期
MIYOSHI Eichi

三善英知さん@92期


昭和55年、北野高校卒業(92期)。昭和61年、大阪大学医学部を卒業後、第一内科に入局。阪大医学部附属病院、国立大阪医療センターで臨床医(消化器内科)として勤務した後、大阪大学大学院医学系研究科博士課程に進学し、糖鎖とがんに関する研究を開始した。平成12年、阪大医学部助手、平成14年助教授を経て、平成19年から現職。平成16年にブラウン大学、肝臓研究センターに短期留学。主な受賞歴としては、平成6年山村賞、平成12年日本癌学会奨励賞、平成14年日本分子腫瘍マーカー研究会奨励賞など。現在の専門は、消化器内科学、病態生化学、臨床検査学。ヒトの病気は、約2万3千存在する遺伝子(ゲノム)の1つもしくは複数の遺伝子の異常と環境因子によって引き起こされる。今日、ヒトのゲノム構造がほとんど解明されたが、未だ発症の原因が不明な難治性の疾患は多い。遺伝子の産物であるタンパク質は、作られてすぐに機能を持つのではなく、様々な翻訳後修飾を受けて、初めて正しい働きをする。糖鎖は、その翻訳後修飾の最も重要な生体分子で、ヒトの血液型やインフルエンザの感染性を決めている。

演者は大阪大学を卒業後、消化器内科医として多くの患者の診断、治療を行なってきたが、糖鎖研究の面白さに魅かれ、基礎研究を始めた。糖鎖は、実際の臨床の場で、腫瘍マーカーとして応用され、また画期的な抗体医薬の開発にも関与している。他にも、現在流行のiPS細胞の分化マーカーとして糖鎖が取り上げられ、まさに次世代の大きな研究領域の1つと言える。

一方、現在臨床の場では、様々な疾患のガイドラインが決められ、治療の標準化が行なわれている。マニュアル化世代の人間にとって、これは非常にわかりやすい。病院においてもDPC(DiagnosisProcedure Combination)のシステムが導入され、治療の効率化を目指している。基礎研究、医療の現場の潮流は非常に早く、現在一人の医師に課せられた責務は極めて多い。そして、大学の教官には、教育という大きな使命がある。

演者が、これまで歩んできた医師、研究者としての人生を振り返ると、ふと将棋との共通点を感じることがある。3歳の時に、将棋の駒を並べていた経験が、臨床現場での救急医療や複雑な医学研究へ生かされたようにも思う。今回の六稜トークでは、糖鎖と病気に関わる様々な研究を、将棋との接点に触れながら紹介し、皆さんのご批判を仰ぎたい。最新の糖鎖研究のテクノロジーを使って、現在難治性の疾患に対する新しい診断・治療の開発することが、自分の大きな夢である。

【第75回(6/12)】三善英知さん@92期
公式チラシ(JPG,672KB)
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