photo:NODERA Yuko |
「針目に込めた女たちの哀しみ」森南海子さん@64期
今回64期同期生の森南海子さんが北野高校のトークリレーに登場し、ご自身が思いを込めて収集なさった「千人針」について語ってくださると聞きおよび、 待ちかねて拝聴に参りました。新聞その他メディアの報知のお蔭もあり、当日は六稜人以外の方の参加も数多く予想を上回り会場ホールに入りきれない程の盛況 で 世話人も嬉しい悲鳴を上げておられたようでした。
「手縫いの会」の会報 |
まず北野高校時代のお話では高校生活で感じた違和感、疎外感等をまた服作りで一人立ちされるまでのエピソードやリ・フォームという言葉を造語された経緯など興味深く聞きました。
主題の「千人針」については並々ならぬ熱意をもって追い求められたそのご努力に胸打たれました。一口に「千人針」といっても地方々々によってその仕様が異なるようでした。
その日、同窓会館の一階に展示されたのが、大きな日本列島の形に添って並べ置かれた数々の「千人針」です。今は古び変色著しい布や殆ど朽ちかけているも のもありましたが、かつてそれを手作りした母であり妻であり恋人であり周りの人のそれぞれが針目一針に縫い込めた心が今なお迫って来るようでした。
これ等は各地から森さんの手で掘り起こされ収集されたモノたちです。今は纏めて沖縄の読谷村に寄託保存してあるのですが、この日のために取り寄せられた とか。トークの中ではその一枚一枚を探し当てようやく受け取られた時の持ち主と自分の対話を切々と語って聞かせていただき感動も一入でした。
朝日グラフ(昭和12年8月25日号より) |
私自身にも幼い日に千人針に纏わる思い出が有ります。父が三十歳半ばに応召する時その無事をひたすら祈る心で、千人の針目を乞うために親類や近所の方々 の人数では未だまだ足りないという思いに駆られて、七歳だった私も人通りの多い阪急梅田のコンコースなら好いかもしれないと思いつき其処の隅に立って道行 く人にお願いした記憶がまざまざと残っています。
世代が移り行くにつれ先の戦争の生々しい記憶が薄れてしまう事が懸念されている処で、戦争の悲劇の生き証拠としても「千人針」収集の業績は高く評価されるべきだと思いました。
途中休憩も取らず熱心に話し続けられた森さん。お疲れが出ませんでしたか。
Last Update: Aug.10,2009