【第130回】2015年6月13日(土)「米国のシェール革命:その実態と今後の展望」

maki73牧 武志@73期(牧エネルギー工学研究所 代表・元 帝国石油株式会社 代表取締 役副社長) ◎略歴 昭和42年、京都大学工学部(鉱山学科)を卒業、帝国石油株式会社に入社 (新潟鉱業所の現場に配属)。昭和47年6月、 ナイジェリア石油開発に出向、ナイジェリアの海洋油田開発に従事。昭和51年12月、石油公団 に出向、中国の渤海湾プロジェクトなどに従事。 平成2年、帝国石油 長岡鉱場長。平成3年8月、テイコク・オイル(USA)社長。ヒューストンに駐在し、米国の独立系石油開発会社との合弁事業を立ち上げる。平成7年3月、帝国石油 取締役新潟鉱業所長。平成17年4月、帝国石油 代表取締役副社長。平成18年4月、国際石油開発帝石ホールディング 取締役技術本部長を兼任。平成20年10月、磐城沖石油開発 代表取締役社長に就任、平成22年12月に退任。 平成23年1月から 牧エネルギー工学研究所を立ち上げ、代表を務める。

 

 

米国のシェール革命(要約)
-その実態と今後の展望-

六稜トークリレー(第130回)講話メモ
日時〉平成27年6月13日(土)14時~16時45分
場所)六稜同窓会館
講師〉牧 武志(73期)牧エネルギー工学研究所・代表
文責)久保禎男(73期)

1. はじめに(講師のプロフィルについて)
北野在学中は柔道部に属し、大学は京都大学工学部鉱山学科を卒業した。1967年「(株)帝国石油に入社し、新潟鉱業所に配属され、大深度で高温、高圧、高濃度CO2を含むガス田開発という困難に直面・打開する。ナイジェリア沖合石油開発、渤海湾石油開発等への参画を経て、1991年帝国石油による石油開発の本場の米国進出拠点となるヒューストンのテイコクオイルUSAの代表に就任する。現地で合弁企業とのコンタクトを通じて米国流のビジネスのやり方、エネルギー技術等を学ぶ。2006年国策会社(株)国際石油開発との合併問題が起き、役員として大いに悩むが、合併後の(株)INPEXは今や「和製メジャー」として豪州沖の巨大LNGプロジェクトやアブダビ陸上権益確保等で、日本のエネルギー獲得推進の中核会社となっている。牧武志氏は2008年10月退任まで技術本部長として会社発展に貢献した。

2. 原油の最新の需給推移について
六稜トークリレーという発表の場を与えられて身が引き締まる思いですが、できるだけわかりやすく今米国で起きているシェール革命の実態をご理解いただくよう話を進めます。
1) 可採埋蔵量  2014年末の「原油可採埋蔵量」は一昨日のデータ更新を反映させて、1.7兆bblとなりました。(07年比22%増加)
従来からその存在は確認されていたベネゼラのタールサンド2205億bblが新たに経済的に採掘可能として追加され大きく増えております。カナダのオイルサンド1678億bblも以前は同じ扱いでした。この結果、可採年数R/Pは52となりました。不思議なことに過去40年この数字は不変です。私の入社時(50年前)は30年と言われたものでした。この経緯を知る開発技術者として、2000年代中頃の「ピークオイル論」は見当違いも甚だしいと感じていました。
2)原油生産量  2014年の全世界の生産量は89百万BD(07年比7.6%増),内米国12、サウジ12ロシア11と続き、OPECは37となっています。ベネゼラの生産量が下がったのは外国企業をチャベス時代に追い出したためとされています。
3)原油消費量  2014年の全世界消費量は92百万BD(07年比6.1%増)で、米国19、中国11、日本4と続きますが、OECDは45と07年比9%減、その減産分以上がBRICsで増加しています。

3. 天然ガス(NG)の需給について
1) 国別天然ガスの埋蔵量(2014年末)
イラン34兆m3、ロシア33、カタール25、トルクメニスタン18米国10サウジ⒏等合計187兆m3で07年比13%増とされています。
2)可採年数  以上の結果R/Pは1980年来ほとんど横ばいで、50~60年、2014年は55.1年とされています。
3)NGの生産量  2,014年の全世界合計は34600億m3(対07年比17%増)で、内訳は米国7300億m3、ロシア5800、カタール1800、イラン1700カナダ1600中国1300、ノルウエー1100、サウジ1100等となっています。
4)国別NG消費量  2014年世界合計は33900億m3(対07年比15%増)ですが、米国が7600億m3、ロシア4100、中国1900、イラン1700,日本1100,サウジ1100、カナダ1000等となっています。日本は原発停止の影響で増えましたが、中国は公害対策で2.6倍、米国はシェール革命で15%増加し、EUは景気後退で減少しました。

4. 原油価格・NG価格について
1) 大きな流れの把握
1985年から2002年まではおおむね20ドル/bbl とみて良いでしょう。
03年30ドル、04年40ドル、05年50ドル、06年60ドル、07年70ドルと年10ドル単位で上がり、08年急騰して一時140ドル近いピークを付けました。2014年秋までは100ドル越えが続いていましたが、2014年10月急落しました。一時50ドルを切っていましたが、米国の掘削リグ稼働数の急減を受けて60ドル近くまで戻しています。
2) NGの米国相場は「ヘンリーハブ価格」で決まっています。2005年当時確か9ドル/百万Btuが現在3ドルに下落しています。
3) 日本のLNG(液化石油天然ガス)の価格は原油のJCC(日本到着価格)×0.85が価格フォーミュラとなっています。
最近まで、日本着LNGは16ドル/百万Btu、EU、英国向けが9ドル(ヘンリーハブ3.6ドルと日本着の中間値?)程度だったと思います。
ヘンリーハブ値が2.7に落ち、日本向けのSPOT価格も7ドル台のものが出ているようです。最近の東電と中部電力による共同国債入札には実に20社が応札したようで、LNGも買い手市場に転換しつつあります。

5. シェール層からのエネルギーの抽出方法
1) 頁岩(シェール)は泥岩の一種で有機物に富み、地下の高温高圧下の超長期間で石油・天然ガスを生み出します。それらが浸透性の高い砂岩・炭酸塩岩などの貯留槽にたまったものが「在来型石油・天然ガス」です。
2) シェール層は孔隙率が小さく、石油・天然ガスをそのままの状態で閉じ込めています。微細な割れ目が小さな貯留槽を作り石油・天然ガスを閉じ込めている-それがシェールオイル・シェールガスなのです。従来、これらにアクセスするにはコストが合わなかったのですが、原油価格が60ドルを超すあたりから部分的に採算が取れる井戸が増えだしました。2000~3000メートルも縦に掘って、そこから水平に広げる方式です。
3)「バネットガス田(テキサス州)」を例にとって見てみましょう。
広さは6500平方マイルで千葉県の3倍の面積に相当します。井戸の数は14000以上あります。1981年に着手し、03年頃から水平井戸に移行し、採算性が大幅に向上しました。

ここの空隙率は良いところで6%と在来型の30%に比べて小さく、そのため浸透性が低いいのが特徴です。
生産開始1年で生産量は30%まで減衰してしまいます。つまり、シェールガス田の特徴は「短寿命」故、次々と新しい地点を探して掘削場所を移動する必要があるのです。当初は「Core-Area〈経済性が高い〉」と呼ばれるところで開発が進み、次にその周辺地区の「Extension-Area」と呼ばれるところに移ります。Extension Areaは生産性が劣り商業的開発が難しくなります。また井戸と井戸の間隔を狭くし、多くの井戸を掘れば全体の回収率は上がりますが、井戸が干渉し合って、井戸一本当たりの生産量が落ち、経済性が下がります。適切な井戸間隔は技術革新と天然ガス価格によって変わってきます。

「バネットガス田」の埋蔵量評価はEIA評価が30Tcfで、チェサピーク社の評価は75Tcfと大きな開きがありますが、これは井戸数をどれだけ掘るかで変わってきています。前述の井戸と井戸の適正間隔に関わる問題で、今後の開発の進展で適正間隔が変わる可能性があり、一概にどちらが正しいと言えません。

6. 原油価格の下落と米国原油事情
1) 米国の大雑把な原油生産量、輸入量の推移は以下のとおりです。
1990年    2007年     2014年
生産量    750     500      870万BD
輸入量             1200      500万BD
2)2014年第3Q と2015年5月22日の米国の掘削状況変化
全米で1920井戸から885井戸の46パーセントまで激減しました。

7.マーゼラスガス田について(レンジリゾーシス社の事例)
1)ニューヨーク州・ペンシルベニア州・オハイオ州・ウエストバージニア州に跨る広大なシェールガス田で2015年6月の推定生産量は16.78Bcf(6.10Tcf→LNG換算1.28億T/年)で世界最大のカタールLNGの輸出量7810万t/年をはるかにしのぐ巨大ガス田が開発開始から僅か6年余で出現したことになります。
2)ここはバネットの10倍以上の9.5万平方マイルの面積を有する巨大ガス田で、その生産性が高くバネットに比べ採算性が優れている。1坑井当たりの初期ガス生産量はバネットの7倍強の18MMcf/dとなっており、累計生産量は15Bcfとバネットの約6倍です。
3)5年間で水平管の延長は倍になりましたが、コストは63%カットできたそうです。その内訳として、一本当たりの掘削コストが5年で61%に減少し、仕上げコストも66%減が実現できました。
4)レンジリゾーシス社のシェールガス開発の採算限界値は、この7年間で4.30ドル/Mcfから2.46ドル/Mcfまで大きく低下していますが、これは前述のコスト削減に加え、様々な技術向上から井戸と井戸の間隔(水平部の間の掘削)を小さく(Down-Spacing)してもお互いが干渉しない最適位置を追求するなどの生産性向上も大きいようです。

8.バッケンシェールについて
1) ノースダコタとモンタナからカナダのサスカチュワンにまたがる北海道の2/3の広さに相当するシェールオイルフィールドです。
「上部バッケン層」は23Ftの厚さで、30~80FTの「中央バッケン層(開発対象)」10~30FTの「下部バッケン層」と続きその下に第一、第二、第三、第四のスリー・フォークス層(TFCS:開発対象)があります。
2)2014年第3Qには189基のリグが稼働していましたが、油価の下落で現在78基に減少し、今後はこのペースを維持するでしょう。最近年間30万BDの勢いで伸び、8年を経て100万BDの大油田が誕生しました。(2014年12月)
3)この油田はいずれ200万BDの生産も可能と言われ、320億バレルの巨大埋蔵量があるとされています。
4)オアシス社はバッケン開発に特化し07年設立された中堅石油会社です。
・Inventory(掘削候補地)として3590の井戸があります。
・2014年に172坑井を掘削しましたが、このペースで20年分のInventoryがあります。
・開発投資は2014年1506百万ドル、15年は油価低迷で半分以下に減額し705百万ドル
・2015年の生産予定量の約半分を先物市場89.13ドルでヘッジ済みです。
・2014年の開発生産コストは59.2ドルで、同地の原油価格はWTIより10ドル安く、従って採算限界はWTIで70ドルとなります。
・2014年度の経常利益814百万ドル、税引き利益507百万ドル達成できましたが、15年1Qは赤字決算です。
・2015年は、コアーエリアへの開発の集中と、コスト削減・生産性向上で、WTIが60ドルでもIRR(Internal Rate of Return内部収益率)30%以上を目指しています。

9.イーグルフォードシェール層について
1)テキサス州南部の北海道の2/3に相当する広がりを持つシェールオイル層ですが、ガス噴出という厄介な問題があり、掘削泥水の比重を上げる必要のある難しい地域でした。
08年にペトロフォーク・エナージー社は11000FTの高深度初日産量9.1MMcfeの天然ガスの生産に成功しました。次いで09年EOGリゾーシス社は初日産2000バレルの原油の生産に成功しました。
2)パイオニアナチュラルリソーシズ社は埋蔵量が石油250億バレル、天然ガス150Tcfに達する可能性があるという評価をしています。
3)08年から僅か5年で100万BDの大油田が誕生したことになります。
14年3Qに206基稼働していたリグは15年5月半減の89基となっています。
4)EOGリゾーシス社の開発状況
・EOGは本地域の主要プレイヤーで、技術革新により最近の5年間で、開発コストを3割削減し、1坑井当たりの生産量を5割アップさせて、採算性を大幅に向上させました。これでWTIが50ドルでもIRRが30%確保できるようになっています。
・油価の下落を受けてEOGリゾーシス社は当面(15年)投資をコアーエリアに集中し前年比の40%カットで対応すると共に、既に掘削した井戸の生産開始を油価が回復するまで遅らせることを考えています。WTIが65ドルに戻ればリグ稼働を前年の水準に戻すとのことで、他社の70ドルレベルよりも積極姿勢です。

10.パーミアンベイスン計画
1)テキサスとニューメキシコに広がる230千Km2の本州の面積に匹敵する広大な地域です。1921年から2011年まで原油285億バレル、天然ガス75Tcfを累積生産しました。2010年ごろから再開発が始まっています。80万BDまで減退していた生産量が現在では200万BDに回復し、掘削リグも2014年3Qに559基をピークに達するも、油価の下落を受けて15年5月には233基に減少中です。
2)原油生産量は6年で100万BD増加し、15年6月206万BDとなっています。本地区の主要プレイヤーのパイオニアナチュラルリソーシズ社は、この油田の埋蔵量が750億バレルの規模に達すると可能性があるとしており、そうなるとサウジのガワール油田に次ぐ世界で2番目の大油田となることが期待されています。

シェールオイル・シェールガスの埋蔵量をまとめると以下のようになります。

È

シェール油 シェールガス
シェール名 原油(BBO) ガス(Tcf) シェール名 原油(BBO) ガス(Tcf)
バッケン 8.0 7.0 マーセラス 0.9 410.0
パーミアン 5.3 7.5 ユーチカ 37.2
イーグルフォード 5.2 5.9 ヘイネシル 74.7
オウスチンチョーク 7.4 19.9 フェイエティヴィル 15.6
モントニー 13.7 15.2 バネット 29.5
その他 7.5 10.5 ウッドフォード 28.3
イーグルフォード 5.6 55.0
その他 1.6 157.9
合計 47.1 66.0 8.1 542.8
EIA評価 原油合計 550億バレル 天然ガス合計 609兆立方フィート

11.原油・天然ガスの生産量と価格の展望
1)天然ガス
・ヘンリーハブが現在の3$/MMBtu以下では大半のフィールドで採算割れとなり、早晩3.5~4.0$/MMBtuの水準に戻るでしょう。価格が戻れば緩やかに生産量が上昇するでしょう。
・今後、LNG、産業用などで毎年、1Tcf以上需要が伸びると想定され、2016年には需給がタイトになり、価格の上昇が更に確かなものになるでしょう。
・2011年7月のガスバブルが弾ける以前の採算限界は大半のフィールドで5$/MMBtu程度だったと推定されますが、現在では坑井の開発コストの低減と生産能力向上により、採算限界が下がり、ヘンリーハブは5$/MMBtuが上限と考えられます。
2) 原油
・現在のWTI 50ドル/バレルの水準が続くと、2015年央には生産量の伸びは止まり、015年後半には価格上昇に転ずるのではないでしょうか。そうなれば再び緩やかに生産量は伸び続けるでしょう。
・原油価格は100ドル/バレル時代に戻ることは考えられず、80ドル/バレルでも、カナダオ
イルサンド、大半のシェールオイルが息を吹き返し、再び大増産となります。従ってWTIは70~80ドル/バレル程度が天井となるでしょう。
・最近の油価の動きは、スイングプロデューサーがサウジから米国に変わったことを示しています。ただし、サウジとは違い、高値維持を図るのではなく、高油価になればリグ稼働数が増え、生産量が増加、油価高騰に歯止めがかかります。低油価になればリグ稼働数が減り、生産量が減少し油価下落にやはり歯止めがかかります。即ち、米国のシェール革命により、原油市場に初めて健全なマーケット機能がもたらされたと考えられるのです。
3)絶え間ない技術革新で、コストが下がり、1坑井当たりの生産量が大幅に増え、採算性を大きく改善させ、低油価・低ガス価格のもとでも開発継続を可能にしています。石油各社はいずれも10数年分のInventoryがあると言い、ある程度の価格水準があれば、今後、米国陸上では長期間に渡って高水準の原油、天然ガスの生産が続くことになるでしょう。

 

12.米国・カナダからのLNG輸出計画について
1)米国LNG計画
Sabine Pass    シニオーレ社        2700万t    2015年
Elba Island    サザーンLNG(シェル)    360      2017年
Cove Point     ドミニオンコーブポイント    525      2017年
Free Port     フリーポートLNG       1320       2018年
Cameron       センプラ・三井・三菱     1200       2018
実現性の高いとみられる8つのプロジェクトで2022年には約9000万tになると言われています。
天然ガス価格3.5ドル(ヘンリーハブ価格3ドル×1.15)、基地費用3ドル、輸送費3ドル、経費・利益1ドルで合計10.5ドル/百万Btuの日本着価格が想定されますが、パナマ運河が改装されれば輸送費がもう少し安くなる可能性があります。
2) カナダLNG輸出計画
Kitmat LNGを含め主要11プロジェクトがあります。ガスの原価はヘンリーハブ価格より0.5ドル安い利点がありますが、インフラが整備されていないため液化基地建設などに時間とコストがかかり、加えて新たにパイプラインの敷設が必要となります。日本への輸送距離がオーストラリアと遜色ないのが魅力ですが、油価下落を受けプロジェクトの採算性が問題となり、いずれのプロジェクトもまだ最終投資判断はされていません。
また、輸出税がどうなるかもあいまいです。
3) 総じてこの先10年程度北米産LNGは10~12ドルと想定され、他の地域でもLNG
プロジェクトが目白押しですから日本にとって「買い手市場」が続くと考えて間違いないでしょう。

13.環境への影響
1)地下水への影響
水圧破砕作業により直接的に地下水汚染が起きている事実は確認されていませんが、坑井の仕上げなどに問題があり、水圧破砕流体が地表に漏れ、地下水汚染を起こす事例や、水道水からメタンガスが出るトラブルなどが報告されています。
2)地震の多発  01年~09年までM3以上の地震は31件の発生に対し、09年以降151件と明らかに有意の差が出ているようです。これは高圧水地下注入に伴う「誘発地震」と考えられており、訴訟も起こされています。
3)カナダのケベック州でのバッケン原油搬送貨車の脱線・爆発事故は「送油パイプライン」の不足が遠因です。背景にオバマ大統領がパイプラインの新設計画に拒否権を発動したことがあります。

14.その他のエネルギー価格への影響
1)シェール革命により世界の原油の可採年数が79年、ガスは120年に延長されたと言われています。
2)ダウケミカルズはメキシコ湾沿いに天然ガスを原料に世界最大規模のエチレン工場を建設しました。シェル、エクソンモービル、信越化学などもこれに続いています。
3)米国の発電燃料は一般炭から天然ガスに切り替えられ、一般炭の余剰が生じています。そのためアジアの石炭価格が120ドル/tから60ドルへと半値になりました。
4)LPGはサウジを中心に輸出玉がFOBで2013年12月1100ドル/tもしていたものが、2014年初めからの米国からの安いLPG輸入開始の影響で2014年7月にサウジ玉が700ドル/tまで下がりました。現在の米国テキサス州のFOB価格は240ドル/tで、サウジ玉も405ドル/tに急落しています。

15.本日のまとめ
① シェール革命による新しい潜在能力増加によって原油、天然ガス枯渇の心配は、当面なくなりました。シェール開発は在来型の油・ガス田より開発コストが高く、たとえ供給の心配はないとしても60~70ドル/バレル程度の高油価が当面続くことになり、そのた
め代替エネルギーの開発が促進されるのではないでしょうか。シェール開発は、世界のエネルギー供給の不安を払拭すると共に、代替エネルギーの開発の促進にもつながるのです。そういう二重の貢献を考えるとその意義は更に大きいと言えます。
②天然ガスは将来へのつなぎエネルギーの最有力候補です。
③日本着のLNG価格は昨年までの16ドル/百万Btu台の高価格に戻ることはないでしょう。
④北米はエネルギー需給が地域内で完結し、中東依存がなくなり、世界の政治・軍事状況に大きな変革をもたらすでしょう。
⑤シェール革命によって、世界の原油価格も60~70ドル/bblで安定すると思われます。
⑥シェール革命は米国内の投資・雇用環境を改善し、その結果、米国経済の景況改善をもたらす可能性があります。
ご静聴ありがとうございました。

16.Q&A
Q1. 最近の総合商社の決算では何千億円という巨大な損失を計上した会社が一社ならずありました。それも三井・三菱の様な大型エネルギープロジェクトに通暁している会社よりも新参者が大やけどを負っていたように思われます。今の時点で損失を計上したのは果たして賢明な措置であったのか否か見解をお聞かせください。

A1. 確かS商事さんのことだと思います。バーミアンのシェールオイルへの投資でしたが、投資対象層が実績の十分ある生産性の良いところでなく、その下部層が対象となっていて十分な生産量があげられず減損処理となったようです。公益事業のガス会社も東西とも数百億円の減損処理をしました。メジャーでエクソンのケースでは410億ドル(4.9兆円)の買い物が不良債権化したようです。もっとも、減損処理後は、今後の投資とリターンを考えればよいのでチャンスがまた出てきます。体力のある会社なら減損処理は将来のタネになります。
資源開発は短期的な観点ではなく、むしろ「今こそ買い時か!」と言った息の長い話で、まさに体力勝負なのです。

Q2. 原発との関連を質問いたします。米国は確か新規の原発開発を取りやめましたね。日本は再稼働するのかも腰が引けている。日本独自のメタンハイドレートの開発などもなんとなく沙汰やみになった感がありますが、技術的問題なのか経済的問題なのかどのあたりなのでしょうか?

A2.確か2年前に深海掘削船「ちきゅう」によるメタンハイドレートの海上生産テストが愛知県沖でありました。その時の成果は「2万m3/日」という数量でした。つまり、莫大なコストがかかる割に生産量はそれほど多くないということなのです。日本海側の「露出メタンハイドレート」はもっと技術的に困難であるとされています。
私は経済性(E)、エネルギー安定確保(S)環境保全(E)の三拍子がそろうことが肝要であると考えております。その意味で原発再稼働は必要と考えています。                     以上

 

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