プロスタグランジンD合成酵素の結晶を観察 写真提供■OBI第2研究部 |
それは良きにつけ悪しきにつけ、われわれが常に意識しなければならない事柄なのです。われわれの研究というのは世界レベルで進行しているものですから…タッチの差で向こうが早く出したらそれで負け。一月遅れてもいけないし、いわんや一年も遅れると全然だめです。1999年にあちらが出したものを、2000年にこちらが出しても、もう値打ちが全然違います。そういう外国との競争については非常に意識します。
ですから私の経験談としても、同僚と競ったという思いはありませんな。同じグループの中で競争を意識するのは稀であって…むしろ、本当の競争は遠いところで起こる可能性のほうが強いのです。人間の考えることは大体似てますから、自分だけが本当にいいアイディアを持っている…なんていうことは非常に少ないのです。
学問の流れというものは世界的なものですから、ここで考えていることはよそでも考えられていることが多い。それをいかに早く実験まで漕ぎ着けて、速く発表するか…ということで勝敗が決まるわけですから、外部に対する競争心は非常にありますよ。ですから、意識的に未発表のデータは外に漏れないように留意しています。
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見えてたけれど認識できてなかった。それに気がつくということが研究ですから、実際「鈍」じゃないとアカンのです。あんまり賢いと…何でも自分で解った気になってしまうからね。教科書読んで納得してしまったら、それで終いでしょ。何ら新しい発見に繋がらない。
その代わり、そういう人はいろんなことを知っていますから、例えば裁判官なんかに向いている。六法全書を隅まで知っていなければいけませんからね。私なんか裁判官になったら全然ダメ。鋭い人は正宗の銘刀みたいなもので…でも一方で、大きな木を伐るのには鈍なナタでなければならない…というような適材適所があります。ですから人それぞれに良いところがあって、それを存分に活かせるのが幸せだと思うんですがね。