われら六稜人【第44回】平和構築の現場で

第8幕
正統性のある政府を

投票を待つ人々
投票を待つ人々

選挙は民主主義を実現するためのひとつの手段であることは誰もが認識するところではありますけれど、PKO下の選挙はもうひとつ特別な使命を負っています。それは、復興に向けての強いリーダーシップを発揮できる「正統性」を新しい政府に与える、ということです。内戦で国が2分、3分されてしまった後で、また一緒になって国づくりを進めてゆくには、強い正統性を持った政府をつくる必要があります。そのためには、国際社会が一緒になって準備をした自由で公正な選挙によってこの政府は誕生した、というしっかりとした事実を作り上げることです。日本や他の先進諸国では、選挙は自由で公正なものという前提で社会が成り立っていますが、そうではない国も世界中にたくさんあります。ですので、ここで第三者の国連が関与しているということが非常に重要になってくるのです。

内戦後、初めての投票
内戦後、初めての投票

投票日当日は快晴でした。これまで1年間準備してきたものがこの1日にかかっていると思うと、喜びと不安の混ざった複雑な心境でした。大統領、上院、下院の同時選挙で、投票率は約75%。紛争直後の選挙としてはやや低めでした。天気が良いと日本では投票率が上がるという因果関係ですが、熱帯の国では炎天下で列をなして投票を待つ人々の健康状態をまず心配しなければならないということになります。あまりに待ち時間が長いと、元兵士が暴れ出す可能性もありますので、投票所のスタッフは必死です。投票自体は大きな混乱なく実施されました。そして即日開票して集計され、一連の選挙実施プロセスは大成功に終わりました。正直なところ、誰が当選したかは今でも思い出せないことがあるんですね。そのことよりも、選挙が平和裏に実施されたことが何よりもうれしくて、選挙スタッフが実務面で仕事をやり遂げたことに心からおめでとうと言いたい気持ちでした。

非常に部分的ではありましたが、コソボとリベリアの国連PKOの「一部分」の様子がお伝えできていれば幸いです。現在も15ほどのPKOが世界各地で展開されていますが、これが増えないことを願うばかりです。

後輩たちに一言ですか?そうですね、私もまだ勉強の日々ですのであまり言える立場にありませんが、ではひとつだけお誘いを。社会へ出るタイミングになったら、国際協力を仕事にするという選択肢もぜひ考えてほしいと思います。現場にいて感じるのは、日本人スタッフの少なさです。平和構築というフィールドは日本人にとってぴったりの仕事場だと思っています。北野の後輩がどんどん入ってきてくれると嬉しいですね。

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