シーン5(エピローグ)
東京・岩波ホール舞台挨拶
- 2000年11月11日。ようこそおいでくださいました。大勢の人が見に来てくださって、こんなにうれしいことはありません。(拍手)
私は慢性関節リウマチで、30年ぐらい薬で痛みをおさえてきました。4年前からは車いすがないと動くのが不自由になりました。私は一人っ子ですが、両親が 離婚、それぞれ再婚しましたので4人の親、、夫の親とあわせて6人の親がいます。2人亡くなっていま4人です。親の問題、介護のこと、本当にたいへんで す。
3年前、門野晴子さんの『老親を棄てられますか』という本に出会ったんです。大変な時代、どうしてもいまこれを映画にしたいと思いました。
私はそれまで4本の映画を作ってきましたが、いずれも、愛とは、性とは、ふれあいとは、共に生きるとは、をテーマにしてきました。みんな若い人たちへのメッセージのつもりでした。この本にはそれがすべてふくまれている、何がなんでも映画化したいと思いました。
一人で悩んでいてもしかたがありません。門野さんにお願いしてみました。
「条件があります」
「なんですか」
「おじいちゃん役は小林桂樹さんにお願いしたい」
「どうしてですか」
「うちのおじいちゃん(義父)に雰囲気が似てるの」
もう一つ条件があるといわれました。
「主人公の実母役に草笛光子さんをお願いしたい」
「どうしてですか」
「若いときからファンで、お会いしたいから(笑)」
実際、撮影現場に来られて、草笛さんと一緒に写真撮ってらっしゃいましたけど(笑)。この二つの条件。
「わかりました。努力します」
草笛さんは最初「こんな意地悪な役、とても無理…適任がいるじゃない、山岡久乃さん」
「だってあの人、亡くなってますよ(笑)」
私は「あなただからいいと思う」とがんばりました。こうして努力努力の結果、最後はこころよく引き受けてくださいました。
娘役の岡本綾さん。いま朝の連続テレビ小説「オードリー」の主役です。いまだったら、どんなにお金積んでもだめでしょう。積めませんけどね(笑)。ラッキーでした。完成したあとNHKが決まったんですから。
さて私はいま60歳、母は84歳で、4年前からぼけの症状がでています。夫が倒れて施設に入り、一人暮しができないということで昨年(99年)6月から一緒に住んでいます。41年ぶりの親子いっしょの生活です。
この母が私の車いすを押してくれています。物忘れはひどいのですが足腰はしゃんとしていて、私の荷物、自分の荷物はきちんと持ってくれます。私のくつした をはかせてくれたり、足を洗ってくれたり、私は手が届きませんから。撮影も東京、奈良と行動を共にしました。母を介護しながら介護されているんですね。
映画で「おじいちゃんは、ゆっくり成長するタイプなの」というせりふがあります。人は生きている限り成長し、日々学んでいくんです。母も私も時に絶望的に なることもありますが、私たちもゆっくり成長しているなと、ずいぶん励まされております。何よりも映画を楽しんでいただきたいと思います。そして、見てよ かったらまわりの人に宣伝していただけたらと思います。
ではどうぞごゆっくりご覧ください(拍手)。
(ここで同窓生から花束を贈られる)
ありがとうございます。私の大阪の高校時代の同級生、同窓生の方がたくさん見に来ていただいています。この場を借りてお礼申し上げます(拍手)。
この日は六稜メンバー20人ほどが鑑賞。 終了後、別室で槙坪さんを囲んで話をききました。 |
Update : Dec.23,2000