われら六稜人【第30回】ECOマインドを持って


関西電力大飯発電所
発電量471万KWを誇る日本最大級の原発である…

第3段階

核融合もダメ、原発もダメ

    ボクは社会科学現象と自然科学現象に区別はないと考えています。北野で社研と理研の両方に所属していたこともそうですがね。これは一貫していまして、現在もそういうベースで研究している訳なんです。今から25年ほど前、ボクが40才の頃に「原子力の有効利用」という言葉が盛んに言われるようになりました。核融合により石油資源が枯渇しても未来がバラ 色になるという…例のアレです。ボクは「そんなもの成功するわけがない、嘘だらけだ」と主張しました。今も主張し続けていますよ。
    だってそうでしょう…核融合や原子力発電所の建物や設備を石油(製品)を使わないで、どうやって作るんです?原発だけじゃありません。石炭火力発電にし たって、原料の石炭は石油を使って掘るわけだし、水力発電だって…いたるところで石油は必要なんです。石油が枯渇したら何も出来ないですよ。いま「資源」 と言われるものはすべて石油なんですよ。石油があらゆるエネルギー資源の中で最も優れた資源なんです。

    「原発を駄目というなら代替エネルギーを示せ」と言うことで太陽光発電や風力発電を指摘する人がいますが、ボクはそれも嘘だと思います。原発1基分の発電 力を、たとえば太陽光で賄うとすれば…東京の山手線の内側一杯に太陽電池のパネルを敷き詰めないといけません。これをね、40基分も実際どこに作れと言う んですか(笑)。
    「海岸にずらりと並べる」なんていう馬鹿な人もいますが、そんなもの潮風の塩害でいっぺんに駄目になりますよ。「空中にずらりと並べる」なんて事を言う人 もありますが、そんなことをしたらパネルの下が日影になってしまいますよね。どれもこれも嘘ッパチなんです。最後まで芯の通った論理的なプランなど、あり はしない。その意見を述べたら、今度は脱原発のグループからも総スカンを食らいましてね(笑)。以後10年間は追放状態でした。今回の例のJCOの臨界事 故ね…あれでやっと、ボクも発言できるようになりましたがね(笑)。

    石油をあまり使わずに原発にも代わり得る発電の方法というのが、こういう次第でなかなか難しいわけですが、やっと10年前「これなら…」というのが見つかりました。天然ガスです。

    天然ガスを燃やしてガスタービンを回し、これで発電するんです。ガスタービンというのはジェット機のエンジンね…あれと同じ仕組みです。これは発電効率が 高くてね。原子力の発電効率がせいぜい30%、火力発電が40%なんですが、天然ガスだと50%、いや、最近は60%の発電効率も実現しそうな勢いです。
    ガスタービン1基で35万キロワットの発電が可能なんですが、この設備は1年もあれば造れます。原発なんて…造るのに10年くらいかかるでしょ。用地買収 や地域住民への補償、それから設備投資にいたるイニシャルコストの上に、さらに常に危険と隣り合せのランニングコスト。そのうえ廃棄物…。とてもじゃない けど原発はコスト高で割に合わない、ペイしない発電方法なんです。


    写真提供 : 日石三菱株式会社

    対して、天然ガスというのは海底に膨大に存在しています。石油の採掘現場でよく火を燃やしているでしょ、あれが天然ガスなんです。危なくて邪魔になるか ら…という理由で、これまでは無駄に燃やしていたんですね。あれの利用方法が確立したのと、安定供給の目処が立ったのとで…いま非常に注目され始めていま す。

    日本近海にも天然ガスがおよそ無尽蔵にあることが分かっています。え、知らなかったって?政府がずっと隠していたんですよ、利権の配分が終わるまではね。最近になってようやく「適正な」分配作業が終わったので公表された…というわけ(笑)。
    これを採掘して運ぶのはガスパイプラインでやります。海底にパイプラインを建設するんです。陸地もパイプラインで運びます。もう、あちこちに既にパイプラ インが出来つつあります。これが完成すると原発の存在意義が極めて希薄になりますよ。ただ、どのようにして収束するか、廃棄物の処分も含めてどのように原 発を無くしていくかが、今後の頭の痛い問題です。


Update : Mar.23,2000

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