北へ2007〜白夜とフィヨルドの国から【第4歩】
ノルウェー現代住宅事情
▲伝統的ノルウェー住宅〜ヒュッテ(山小屋)
▲天気のいい夏はテーブルを運んで外で食事をすることもある
※写真は現在私が住むアパート。一階にも関わらず
テラスに柵などは無く外部空間と一体感が持てる。
それでも治安がいいので今までに困った事はない。
こちらでは若くしてマンション購入を検討する人が多い。寒い冬にはどうしても家で多くの時間を過ごす事になるし、外食産業が日本ほど盛んでないので、パーティーや飲み会は家でもよおすことが多く、また家族で過ごす時間を大切にするノルウェーでは、結果として人々の家に対するこだわりは日本のそれより一般的に大きいように思う。また結婚という制度にこだわらずマンションの共同名義での購入もしやすいし、政府としても持ち家を推進する税制制度を取っている。
さて、日本とノルウェーの住宅の相違点は、基本的に夏を旨としてデザインされる日本の住宅と、太陽がなかなか沈まない夏、寒く日が短い冬に代表されるノルウェーの気候に適するように作られるノルウェーの住宅との間に大きく現れる。ノルウェーの伝統的建築工法は木造の壁式構造、つまり丸太小屋である。世界どこでも近代素材と工法が建築にもちいられるようになった現代の住宅において、その差は小さくなってきて入るが、それでも生活習慣と気候の違いから様々な差はある。光を取り入れる窓周辺の違いは顕著だ。ノルウェーでは窓は基本的に全て二重窓で、多くの家庭がブラインド(低い太陽高度で差し込む光を遮るためと夏の白夜に人工的に夜を作り出し眠れる環境を作るため)もしくは遮光効果のあるカーテンを設置している。日本との共通点は、背が高い民族であるにもかかわらず、天井はさほど高くないという点だろうか。寒く長い冬に部屋を常に暖かく保つためには、天井は高過ぎない方が効率的だからだ。
私とノルウェー人パートナーも典型的20代カップルとして、マンションの購入を検討していた。その際に出会ったあるプランを参考にして、ノルウェーの現代住宅事情を見てみよう。これは飽く間でも現代の新築物件であり、伝統的暮らし方に、流行や近代的暮らし方が影響しているといってよいと思う。
▲大きな窓とテラスを各住居に実現させるために
ギザギザの外周となった現代マンション。
一番下のホテルは一棟ごとに独立させる手法を
取っているが、やっぱりポコポコ感は否めない。
プランをみるとわかるように、まずテラス(ベランダ)が非常に大きく、しかも二か所もとられていることから、いかにテラスがこちらでの生活に重要かがわかるだろう。日本だと下手をすれば、洗濯物干しにのみ使用されてしまいがちなテラスだが、こちらでは食事をしたり、グリルをしたり、日光浴をしたりと日常生活(特に夏)に大きく密着している(ノルウェー人は外で食事をするのが大好きだ。日光を浴びられる日は存分に浴びようという気持ちはこちらでの冬を経験すれば痛いほど分かってくる)。
そして、入り口の玄関はあるにはあるが、日本のそれの様に段差はなく、まわりとの境目が曖昧だ。(ちなみにノルウェーでは日本と同じように室内では靴を脱ぎます。その点は良かったですね)。そして注目すべきは二つの浴室と洗濯物室である。さほど広くないマンションなのに、浴室が二つもあり、にも関わらず湯船がないことには要注目だ。一つの浴室はメイン(夫婦、カップル)の寝室からのみアクセス可能になっており家族間のプライバシーが保たれることはかなり評価できる。この物件はけっこう値が張るにも関わらず湯船がないということは、寒い国であるにも関わらず湯船は文化上重要だと認められていないことを示している。洗濯しそれを干すための部屋もある。つまり洗濯機(もしくは乾燥機も)があり、干すスペースがある。なぜノルウェーでは洗濯物を外に干さないかを考察してみたが、
1.一日のうち天気がかわりやすい。
2.主婦が存在しないことが多いので、天気がかわっても洗濯物を取り込めない。
3.空気が乾燥しているので、室内干しでもちゃんと乾く。
以上ではないかと思う。
テラスの確保といい、いかに冬の少ない光を存分に室内に取り込むかは、北欧の建築が常に直面しているテーマだ。解決策として、建築の太陽光線の方角の表面積を多くとることにすると、結果として、建物はギザギザの外周をもつことになる。よって最近の新築マンションは外からみるとポコポコギザギザしていることが多い。これを私は勝手にノルウェー建築ポコポコ問題と名付け、そのデザインとの統合性をこちらで建築設計をしていく者として考えていかなければならない課題として捉えている。
Last Update: Mar.23,2007