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日時: | 2008年1月16日(水)11時30分〜14時 |
場所: | 銀座ライオン7丁目店6階 |
出席者: | 51名(内65会会員:江原、大隅、梶本、正林、峯) |
講師: | 最高検察庁検事 鶴田小夜子氏 |
演題: | 「あなたは裁判員に指名されたらどうしますか」 |
講師紹介: (講師より聴取) |
1975年 京都大学法学部卒業 1976年 司法試験合格 1979年 東京地検検事 1984年 弁護士 1989年 甲府、東京、長野地検各検事、東京高検検事 2002年 仙台高検検事(公安部長、総務部長) 2004年 明治大学大学院法務研究科特任教授 2007年 現職 |
講演内容: (要点のみ) |
裁判員という文字を見ただけで、読むのはやめたなんて思っていませんか? でも今年の秋も深まるころには、あなたのもとにも「裁判員候補者名簿に載りました」というお知らせが届くかもしれません。そのとき慌てないためにも、どうぞこのまま読み進んでください。 まず、『裁判員制度ってどんなもの?』から始めましょう。 一言で言えば、皆様の中からくじで選ばれた裁判員と裁判官が一緒になって刑事裁判をするもの。 ああアメリカの陪審員みたいなものねと思われるかもしれませんが、実は大違い。陪審員が決めるのは有罪か無罪かだけ、ここには裁判官は入りませんし、全員一致でなければ結論は出ません。でも、日本でこれから始まる裁判員のほうは、有罪・無罪のほかに有罪の場合の刑の重さも含まれますし、いつも裁判官と一緒に話し合い、話がまとまらなければ多数決で決められるもの。しかも、陪審員と違って裁判員は、その日の審理や評議が終われば自宅に帰ることもできます。 次に、『なぜ今裁判員制度なの?』を考えてみましょう。 一言で言えば、時代が変わったということ。 あなたは愛知県長久手の立てこもり事件の報道を見てどう感じましたか? 警察官2名を殺傷し、家族にも怪我をさせた犯人を、それでも生け捕りにしようとした警察の対応を、生ぬるいとかまどろっこしいとかお思いではなかったでしょうか?でもそれは10年あるいは20年前には、あなた自身思いもしなかったことのはず。そう、あなたの意識が変化しているのです。 また、最近治安が悪くなったと感じてはいませんか?世田谷の一家惨殺事件では、たくさんの遺留品があったにもかかわらず、犯人は検挙されていません。一昔前ならば遺留品を販売した商店などから犯人にたどり着けたのに、今ではインターネットで簡単に商品が手に入るため、昔ながらの捜査では犯人検挙が困難になってきています。水と治安はただだった時代から、治安も自分たちの手で守る時代へと変化しているのです。そこで必要なのが、刑事裁判にもっと関心を持っていただくこと。裁判員になることで裁判が身近になってくるはずです。そして、身の回りの治安にも、もっと関心を持っていただけたらと期待されています。 極めつけは、裁判が早くわかりやすくなること。 〜想い出の 事件を裁く 最高裁〜 これは小泉前総理がお好きだった川柳とか。確かに法律の専門家だけの裁判では、事件の隅々まで少しの疑いも残さないようにと、重箱の隅をつつくような裁判が行われていた部分があることは否めません。それでも長年慣れ親しんだやり方ですから、自分たちだけで軌道修正することはまず無理です。そこで登場するのが裁判員制度。制度を変えて、あなたのお力もお借りして、裁判をスピーディにしようとしているのです。どのくらい早くなるかって?……8割ほどの事件は3日以内に終わると見込まれています。 また、新聞などで裁判の報道を読んだとき、なんだかチンプンカンプンだなと感じてはおられませんか?……そう、専門家集団が『あなたの視点・あなたの感覚・あなたの言葉』と少し離れたところで裁判をしていた部分もあると反省しなければなりません。いま、裁判官・検察官・弁護士がそれぞれの持ち場で、裁判をわかりやすいものにしようと努力しています。どのくらいわかりやすくなるかは、乞うご期待!!というところです。 ほかにも裁判員制度を始める目的はたくさんあるようですが、あなたはほかにどんなことをお考えですか? さて今度は、『裁判員はどのようにして選ばれるか?』ということ。 一言で言えば、くじ引きです。 今年の秋が深まるころ、“来年分の裁判員候補者名簿に載りましたよ”というご案内が届きます。名簿に載るのは有権者名簿から選ばれた方々。学歴とか職業とか資格とかで選別することはまったくありません。全国では30万人ほどの方々にこのご案内が届くと見込まれています。 ご案内を受け取ったら何か準備が要るのかとご心配ですか? 何の準備も要りません。しいて言えば、裁判員になるかもしれないという心の準備くらいでしょうか。 その次に、だいたい裁判の行われる日の6週間前に、こんどは”裁判員候補者になりました”というお知らせが届きます。名簿からくじで選ばれるもので、いまのところ裁判員候補者になる確率は、300人から600人に1人といわれています。宝くじに当たるよりよっぽど高い確率ですね。そのお知らせには、いついつ裁判所にきてくださいということのほか、裁判は何日間を予定していますということも書かれていますので、その分の日程調整をお願いします。 さあ、いよいよ裁判当日。裁判員に選ばれるのは6人だけなのに、何十人かの人が裁判所に集まります。裁判長が面接して、辞退したい方の申し出や公正でない判断をするおそれがないかを調査します。最後にまたくじ引きで6人の裁判員が決まります。 さて、あなたは栄えある裁判員一期生に選ばれるでしょうか… 最後に、『裁判員は何をするのか?』ということ。 一言で言えば、有罪か無罪かと、有罪の場合の刑の重さの判断です。 有罪無罪の判断なんて法律も知らないのにできっこないよなんて思っていませんか? ご心配なく!誰が嘘をついているか突き止めればよいのです。私はやっていないという被告人の言い分と被告人が包丁で被害者を刺すのを見たという目撃者の話の、いったいどちらが信用できるか判断していただけばよいのです。この話はうますぎて信用できないとかあの人の話は眉唾だとか…日々の暮らしの中であなたがいつも判断していることと同じです。 刑の重さにしても同じこと。裁判官がその事件で言い渡すことのできる刑の幅を示してくれますから、あなたが日ごろ感じているところで意見を言い、仲間の裁判員や裁判官とも話し合って、結論を出していただければよいのです。 有罪・無罪、刑の重さ、どちらも全員一致が理想ですが、それができないときには、裁判員と裁判官が同じ重さの一票の多数決で決められます。その結果、チーム全体としての意思表示として判決を出すことになるのです。 裁判員制度について、大まかなところをご紹介しましたが、まだまだ疑問があるかと思います。そんなあなたは、最寄りの検察庁の企画調査課にお問い合わせください。ご希望の日時・場所にお訪ねいたします。 |