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日時: | 2005年10月24日(水)11時30分〜14時 |
場所: | 銀座ライオン7丁目店6階 |
出席者: | 60名(内65会会員:大隅、国政、正林、峯) |
講師: | 日本産業ガス協会常務理事 杉浦 澄氏(75期) |
演題: | 「安全のパラダイム変換」 |
講師紹介: | 同期生よりの紹介)講師は高校時代からgoing may wayの人物との印象。大学も、関西から東北とはなかなか考えられないが、東北大学機械工学部に進学した。大学卒業後、東洋熱工業、日本酸素に勤務、日本酸素時代はドイツ勤務も経験、帰国後は産業ガスの安全問題一筋に取り組み現在に至る。英国安全協議会安全Diploma。ゴルフはオフィシャル・ハンディ8の腕前。 |
講演内容: (要点のみ) |
(1)パラダイムとは何か? 一般的解釈としては「典型、模範、常識、コモンセンス、通念」などの意味で使われるが、「広く社会的に確立した概念」と云えよう。 (2)変換とは何か? これまでと異なった捉え方であり最も異なったものは「逆転の発想」。 逆転は(×-1)の捉え方であり、1と-1の間にはいろいろある。 (3)現状の安全確保の基本的考え方 *教育訓練した人は誤らない *適切に設計した設備は故障しない *設備システムは危険検出型でよい(発生して初めて判る) *安全より生産性が優先する(本音) *事故は起こってから対応するのが効率的である(滅多に起こらないから) (4)安全衛生管理の3種の神器 「うっかり」「危険予知不足」「教育不足」 (5)安全確保----現状の問題点 *機械故障がフェイルセーフになっていない *危険検出型システムは故障に対応出来ない *多重化による信頼性向上はメンテナンスが大変で、装置故障による災害は結局防げない *機械・設備安全審査方法が不明である *ヒューマンエラーによる災害が目立つ *作業者の行動・動作の解析が不足しており、不安全行動災害が防げない *対策は「結果」に対して打たれていることが多い(原因に対して打たないので同じことが再び起こる) (6)真面目なリスク管理者の3つの壁 リスクは主に主観的な予測(仮説)でしかない。まだ顕在化していない。作業は表面上無事に実行されている。 (7)マネジメントからの反応 仮説の可能性について主観的でない説明を。現在までに起こっていないから大丈夫。作業・行程の変更に時間とコストがかかる、業績が先決だ! 組織にとってある程度のリスクは当然だ! (8)その反応に対して 論理的、体系的リスク管理のアセスメント手法。根本原因の特定と技術的方策の確立。社会責任の認識、許容リスクの明確化、法の強化 (9)これからの安全は 「基本前提」が明確。「論理」と「技術」で構築。「グローバル」な考え方。「人の命」は何ものにも代えがたい。(このように考えられるか否かが問題。人は誤る、機械は故障するという前提) (10)考えるべき新しい概念 *安全とは何か、リスクとは何か *人は誤り、機械は故障する *安全確保技術の論理変換、危険検出型から安全確認型へ *確率安全と確定安全 *論理的・体系的リスクアセスメント *ヒューマンエラーからヒューマンファクターへ(人は誤るのであるからヒューマンエラーはない。ヒューマンファクターである) *対策は「根本原因」に対して打たれている (11)安全の定義(ISO/IEC Guide 51) 安全:社会的な価値観に照らして受け入れられないリスクからの開放 (12)危険、危険源、曝露そしてリスク *危 険(Danger):特定されない一般的な危険(状態) *危険源(Hazard):神が与えた避ける事が出来ない危険の源(我々が変えることは出来ない) *曝 露(Exposure):危険源との接触可能性の提起と増大(行為) (13)「リスク」「危険」「危険源」「曝露」の関係図(・・省 略・・) (14)リスク低減のプロセス、ISOガイド51 どんなことをやっても必ずリスクは残る (15)安全と危険、「リスク」0と1と、その間0と1の間に不安領域 (16)0と1、その間は別世界(・・省 略・・) (17)2つの安全方策技術とは? *危険検出型と安全確認型 (18)危険検出型とは? 危険信号を検出する。「危険状態」になってからの後手対応。検出手段の失敗はそのままシステムの失敗となり危険状態を阻止出来ない。人的エラーはそのまま危険側となる。確率的な対応である(必ず故障する)。現在までの主たる対応である (19)安全確認型とは? 安全情報を信号とする(検出する)。安全信号の故障は安全側停止となる。「危険状態」になる前の先手対応。人的エラーは介在しないシステムを構築する。確定的対応である。今後の主たるべき安全方策。(安全を最重要と考える会社が日本にも出て来ている。自分の知っている範囲でも2〜3ある) (20)2つの安全論理とは *確率論的安全(いつかはきっと壊れる。多分起きないという甘え) *確定論的安全 (21)確定と確率 どのような固有の性質を持つか(以下参照) (22)確率論的安全の性質 *構成機器、装置の固有の信頼性に基づき安全を検証する *信頼性は通常確率で表現される *従ってこれを確率論的安全という *確率はいつかは起こる確率でもある (23)確率論的取り扱い *安全であるか否か」の2値でなくその間にどちらとも云えない「不安」領域が存在する *ある確率で「起こる」ことを前提とする取り扱いで「起こらないかも」という期待を込める *発生の確率の分布は管理出来ない。何時かは云えない。何時かは必ず起こる *危険検出型対策 (24)確定論的安全の性質 *構成機器、装置の固有の構造に基づき安全を確定する *信頼性に一切よらない *従ってこれを確定論的安全という *安全は常に安全側で停止、保持する (25)確定論的取り扱い *安全である(1)、安全でない(0)の2値として確定される *ここで「安全である」とは、一切のリスクが無い状態をいう *リスクは「不安と危険」の存在が否定出来ない状態である *つまり、危険源と曝露の存在(1)がある *従って、安全であるとは危険源と曝露のどちらか、もしくは両方が無い(0)の状態である *安全確認型方策 (26)「事故」について 「故」あって「事」起こる。逆転させると「故」無ければ「事」起こらず。よって「故」を無くすことが最も効率的な安全方策である (27)「故」とは何か 2つの「故」となる原因要素: HAZARD:危険源、EXPOSURE:曝露 「故」に「人」は入らない (28)R = H × Eの論理式(・・省 略・・) (29)リスクアセスメントの優先順 *安全確認型:R = H × E R=0を目的に本質的に検討。H=0 あるいは E=0 の可能性のみ *一 般 型:R = L × S(組み合わせ)※L = Likelihood S = Severity R =0 が不可能な時、Rレベルの見積もりと評価 これは本質的な対策ではないが、一般的に行なわれている (30)安全理念 ヒューマンファクター(Human Factor) *ヒューマン(人)は必ず誤ることを認め、ヒューマンエラーは存在しないとする *不注意、過信、思い違い、故意等はヒューマンファクター(人間特性)と捉える(to ERR is human, to forgive divine) *「人」も誤りは「結果」であり、「原因」ではないとする (31)ヒューマンファクターによる善意の思考過程 *この方がもっと良くはないか? *何を躊躇うのか、やろう! ちょっと待て!! *だけどもしそうしたらどうなるか? (論理、技術は異論をさしはさめない。「考え方」は様々に分かれる) (32)グローバルな安全確保の基本的考え方 *人は誤りを犯す(Human Factor) *設備はいつか故障する *設備システムは安全確認型とする *確定的安全を構築する *事故は起こさないことが最も効率的(経営者は、確定的リスクを0にすると考えるべき) (33)災害は忘れた頃にやってくる *リスクがあればいつか顕在化する *全てのリスクは無くせない *リスクをマネジメントで最適化する (これにより災害は許容限界内に管理出来る。経営者を始め関係者全てが満足する最適化を行なう) (34)貴方のパラダイムは変換したか? *人は誤ることを認められるか *起こってからあわてるか、起こさないようにするか *人の命は地球より重いか *安全は技術と論理と思えるか(技術と論理しかない。人には依存出来ない) 【報告者注】 講演は、パソコン使用によりスクリーンに詳細な説明資料を映して行なう一方、出席者には同一内容のレジュメが配布された。以上は殆んどレジュメに記載されていた内容である |