日時: | 2004年10月20日(水)11時30分〜14時 |
場所: | 銀座ライオン7丁目店6階 |
出席者: | 35名(内65会会員:国政(講師)、岩下、江原、大隅、梶本、古山、正林、三上、山根、峯) |
講師: | 読売新聞社元論説委員 国政恒裕氏(65期) |
演題: | 「新内閣と今後の経済政策の課題」 |
講師紹介: | 東京大学法学部卒業後読売新聞社東京本社に記者として入社。以来経済記者として大蔵省(現財務省)、日銀、通産省(現経済産業省)、財界、エネルギー業界等を幅広く取材。その後、貿易研修センターにて1年間研修の後読売新聞社ワシントン特派員としてホワイトハウス、財務省等を取材。 帰国後は経理部長、系列会社役員等を歴任の後退社、現在は経済評論家として独立、原稿執筆、講演などを行なっている。 |
講演内容: (要点のみ) |
(1)現在日本経済新聞でFRB前議長ボルカー氏の「私の履歴書」が掲載されているのを懐かしく読んでいる。当時変動相場制への移行など大きな情勢変化があった。ボルカー氏は外国人の自分がいても秘密のことを平気で喋り、これを本社に送稿して一面に大きく掲載されたこともあった。 (2)さて、本題の新内閣であるが、重要なところは全て再任で、サプライズはない。しいて言えば幹事長であるが、以前から郵政改革大賛成と言っていたのが認められたのであろう。顔ぶれを見ると結局派閥均衡をやりなかなか考えた配置をやったと思う。要すれば、郵政民営化重視の布陣と言えよう。 (3)自分は外務大臣に注目した。川口さんは官僚出身だが、若い時在職中に休職して留学、英語に磨きをかけた。外務大臣は国内ではなく、外国を飛び歩くのが仕事、彼女は外国をよく歩きその面では良くやった。 (4)中山前参与を外務大臣にという噂もあり注目していたが、結局辞めてしまった。外務でなく他の大臣でも良かったと思う。彼女が止めたのは、自分の推測では外務省との軋轢が原因と思う。彼女は優しい顔をしているが強硬派、外務省は穏健派で全然合わない。また、彼女は旧大蔵省出身であり役人同士の軋轢・対立は我々の想像以上に激しいものがある。 (5)日本の経済情勢は今良くなっており、地方も次第に良くなっている。 悪いのは古い業種、古い業界である。企業は血の滲む努力をしており、構造改革に乗れなかったところは悪い。中小企業は嘗て良過ぎるくらいだった。日本は弱者保護が強過ぎる。田中角栄の頃から公共事業にふんだんに金を使い、中小企業にものすごく金を使った。地方の農道等の道路工事が好例である。自民党の政治家は献金が欲しいから公共工事を止めようとは絶対言わない。その点小泉氏は珍しい。普通ならばなれない総理に小泉氏がなれたのは自民党に閉塞感があったから。 (6)当時既に政・官・財に利権構造は確立していた。小泉氏が総理になった時、構造改革は遅れると自分は思った。何故なら、自民党が延命してしまうから。本来自民党は割れなければ改革は出来ない。小泉政権がこのように長く保つと思った人はいなかった筈。しかし、これだけ長く続くと世の中確かに少し変わって来た。小泉氏は物を知らない、あまり勉強もしていない。彼は本当に何かやったのか。やっていない。道路公団改革では彼は妥協してしまった。あれならやらない方が良かった。道路公団改革の不評で小泉氏も郵政をやらねばならないと思ったのではないか。 (7)郵政改革について賛否はあるがやった方が良いと思う。これまでいろいろ問題があった。税金を払っていない、赤字になっても分からない、財政投融資において郵貯と簡保の金を大蔵省は好き勝手にばら撒いてきた。 国債も買わせているので売れ残る心配もない、等‥。財政投融資は第二の予算と言われていた。足りなくなれば、どんどん金をつぎ込んでいき返済しなくても済んでしまう。こんな楽なことは無い。郵政改革は財政投融資改革が狙い。従って財務省はこれをやられるのが怖い。国債も売れなくなると困る。小泉氏もそうなると困るので中途半端になる怖れあり。しかし、簡保は自由化して民間と同じ土俵でやるべきである。 (8)生田氏も経営者として優れた実績を残した人物であるが、郵政公社総裁になって少し変わったようだ。ポーズをとっているのかもしれないので今後良く注視したい。 (9)現在の日本は産業構造の変化が起きているということを認識すべきである。ケータイを若い人が使いこなしている。ケータイはパソコン機能を有しカメラ付きが主流になっている。このまま進むと、デジカメは駄目になるかもしれない。 (10)自分はワシントンに赴任した時日本の物価の高さを痛感した。ティッシュペーパーはアメリカの5倍の値段、電話代等もワシントンーロサンゼルス間(日本からベトナム位の距離)でも非常に安かった。当時東京から鹿児島では一通話千円以上していたのではないか。 (11)この高価格を破ったのはヤフーである。2円50銭で国内でもアメリカへでもかけられる。光ファイバーが現実になってきてNTTがやっと動き始めた。このように、改革はつぶれそうにならないと出来ない。自民党もつぶれる危機が迫らないと改革など出来ないであろう。 (12)中国はこれから経済大国になるのは間違いない。紆余曲折はあっても長い目で見れば凄い国になる。インドも今後の発展が見込まれる国。人口が多く、情報産業に人材が多数いるので可能性は大。 (13)今後の政策として、政府は金の使い方を変えねばならない。過保護産業に対し、多少の支援は必要だが助け過ぎてはいけない。更に、最も肝要なのは、官僚を変えること。以前に比べ官僚の質は明らかに低下している。権力が長く続くと必ず腐敗する。最大の抵抗勢力は官僚であり、最も変えねばならないのは官僚である。官僚は国家国民の為よりも自分達の権限を守ることを最優先する。堺屋太一氏は官僚に改革は出来ないと断言している。 (14)日本は中国を活用しても良いが、日本で出来ることは日本でやる。 今はそういう方向に変わりつつある。マクロでは中国、インドに追い抜かれることは間違いない。今後はマクロの量の拡大ではなく質の向上を目指すべきであり、個人の生活の質の充実を計るべきである。 |