六稜NEWS-090801
六稜トークリレー【第67回】
「針目に込めた女たちの哀しみ」森南海子さん@64期
reporter:長谷田三保子さん@66期
8月1日は朝から大雨、各地で警報が出ました。帰り道があぶないかもしれないと思いながらも私は思い切って家を出ました。3時前に会場に着くと会場は満員の人、人。人。もう講演はほとんど終わっていましたので、その内容や状況をお伝えすることはできませんが「森南海子さん」「千人針」についての私の思いを記します。
六稜Webで第67回は《「森南海子さん」の「千人針」》と目にした時から2週間、さまざまな思いをたぐりながら初版本の『千人針』をゆっくりと読み返しました。「千人針」といっても現在は知る人も少なくなったことでしょう。私は千人針を持って立つ人々の姿がそのあたりの風景とともにはっきりと思い出されます。昭和19年に始まった学童疎開、20年3月と6月の大阪大空襲、疎開先で艦載機が急降下してきて思わず道に伏せたことなど、戦争中のさまざまな体験は記憶から消えることはありません。
北野を卒業して30年余、偶然にも高校生の「森南海子さんのお嬢さん」と出会い、彼女を介して森さんにもお会いしました。その際に情報センター出版局発行の『千人針』(初版第1刷:昭和60年9月7日)を頂きました。まさにサイン本でした。それは、阪急石橋駅で時々見かける普段の森さんの物静かな姿からはとても想像できないものでした。
「千人針」にとりつかれ、執拗に追いかけ、そして人の気持ちの奥底にまで立ち入り、「人」を感じ、書き描く執念を感じました。その執念にまさに「森南海子という人」が感じられました。身近で接しておられた人のみが知りえる「森南海子」像が表紙カバーに著者紹介として記されていますのでここに紹介させていただきます。
(中略)……ひっつめ髪をほどいたままで、一日中でも天井を見上げ考えごとにふけったり、体調を崩したといって外部との連絡をいっさい断ったりと、さびしく美しい横顔からは想像もできない気ままさと繊細さをもつ。でも生来のものである「執拗さ」が著者にはあるようだ。家庭人として社会人としていろいろな問題にぶつかり、苦闘し、わざとふざけつつ、しかもそれでも、やりだした仕事、追ったテーマからは逃げようとしない、そんな男のような「しつこさ」で生きる。こうした人が、人間の深遠をのぞき、身を沈めた本書は、ただの感動の泉だけではない内容世界を携えている。
時々、六稜トークリレーを楽しませていただいております。お世話していただいてる方々には心より感謝をしています。
Last Update: Aug.18,2009