六稜グルメレポート
天満の一等星〜お好み焼き「千草」
reporter:岩崎幸子(108期)
私のふるさと天満は、天の川のように大阪の町々を横切り、繋ぐ、天神橋筋商店街を中心に栄えた下町です。
ふるさとを離れて10年、不況や時代の流れで、町の様子はずいぶん変わりました。
帰省するたびに、個人で営んでいたパチンコ屋や食堂が、チェーンのカフェやファーストフード店に変わっていくのは、寂しいものです。
自ら土地を離れておいて、変わらないことを求めるのは、かえって薄情ではないかとおもいます。
生き抜く人々に対して失礼でもあります。
でもやはり、必要だとおもうのです。
変わらぬ、底力のような存在が。
天満の場合、それは天神祭りと、そして昔馴染みの商店ではないでしょうか。
人々の心根を繋ぐ、星のような商店。
ご紹介する『千草』は、なかでも一番星で、一等級のお好み焼き屋です。
天満人同士でお好み焼きを食す相談がまとまった場合、目標は『千草』で間違いないでしょう。あれだけ大きな商店街ですので、ほかにもお好み焼き屋はあります。そしてどこも行列ができるほどおいしい。しかし、地元民が並ぶのは『千草』なのです。
なぜか。
わからないのです。
もちろん、一番おいしいからですが、なぜおいしいか、わからないのです。
レポートを書かせていただくにあたり、美味さの秘訣を友人と推測、議論しました。
「ダシか」
「ソースか」
「マヨネーズか」
「キャベツか」
「キャベツを刻む包丁か」
「鉄板か」
「鉄板にひく油か」
「もしかしてこのコテ?」
「箸かもな」
箸にも棒にもかからぬ議論です。
どうでもよいことです。
知ろうとすることは、本当の美味さを、奇抜な言葉とアクションで表現しようとするグルメレポーターくらいナンセンスです。
仮に店主に伺い答えを貰ったとして、納得いくものではないのです。
味のみならず、風情、佇まい、もてなし、そして客にさえ、宿るものを感じる店です。
おもい入れの強い、地元の店だからでしょうか。
違います。
賭けてもいい。
一度、宝探しのつもりで天神橋筋商店街へいらしてください。
星々のなかから『千草』を見つけ出し、豚玉と焼きそばを召し上がってみてください。
歴史は浅くとも、伝統をほのかに感じる空間です。
伝統について、六稜人なら誰もが少しは覚えがあるだろうと信じます。
強い力。
大きな流れ。
魔法に、かかれ。
●DATA●
お好み焼き『千草』
大阪市北区天神橋4丁目
店主:蜷川裕規さん、103期
(ラグビー部。橋下弁護士と入れ替わり)
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▲細い路地奥の店舗ながら常に行列が絶えない
▲焼きそばも逸品もの
▲お好み焼きは自分で焼くのが大阪流
▲秘伝の自家製マヨネーズ
▲あつあつを召し上がれ
▲店主の蜷川さんは六稜ラガー
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