六稜NEWS-070104
    六稜グルメレポート
    天満の一等星〜お好み焼き「千草」

    reporter:岩崎幸子(108期)


    私のふるさと天満は、天の川のように大阪の町々を横切り、繋ぐ、天神橋筋商店街を中心に栄えた下町です。

    ふるさとを離れて10年、不況や時代の流れで、町の様子はずいぶん変わりました。

    帰省するたびに、個人で営んでいたパチンコ屋や食堂が、チェーンのカフェやファーストフード店に変わっていくのは、寂しいものです。
    自ら土地を離れておいて、変わらないことを求めるのは、かえって薄情ではないかとおもいます。
    生き抜く人々に対して失礼でもあります。

    でもやはり、必要だとおもうのです。
    変わらぬ、底力のような存在が。
    天満の場合、それは天神祭りと、そして昔馴染みの商店ではないでしょうか。

    人々の心根を繋ぐ、星のような商店。

    ご紹介する『千草』は、なかでも一番星で、一等級のお好み焼き屋です。
    天満人同士でお好み焼きを食す相談がまとまった場合、目標は『千草』で間違いないでしょう。あれだけ大きな商店街ですので、ほかにもお好み焼き屋はあります。そしてどこも行列ができるほどおいしい。しかし、地元民が並ぶのは『千草』なのです。

    なぜか。

    わからないのです。
    もちろん、一番おいしいからですが、なぜおいしいか、わからないのです。

    レポートを書かせていただくにあたり、美味さの秘訣を友人と推測、議論しました。

    「ダシか」
    「ソースか」
    「マヨネーズか」
    「キャベツか」
    「キャベツを刻む包丁か」
    「鉄板か」
    「鉄板にひく油か」
    「もしかしてこのコテ?」
    「箸かもな」

    箸にも棒にもかからぬ議論です。
    どうでもよいことです。
    知ろうとすることは、本当の美味さを、奇抜な言葉とアクションで表現しようとするグルメレポーターくらいナンセンスです。

    仮に店主に伺い答えを貰ったとして、納得いくものではないのです。
    味のみならず、風情、佇まい、もてなし、そして客にさえ、宿るものを感じる店です。

    おもい入れの強い、地元の店だからでしょうか。
    違います。
    賭けてもいい。

    一度、宝探しのつもりで天神橋筋商店街へいらしてください。
    星々のなかから『千草』を見つけ出し、豚玉と焼きそばを召し上がってみてください。

    歴史は浅くとも、伝統をほのかに感じる空間です。
    伝統について、六稜人なら誰もが少しは覚えがあるだろうと信じます。


    強い力。
    大きな流れ。
    魔法に、かかれ。

    ●DATA●
    お好み焼き『千草』
    大阪市北区天神橋4丁目
    店主:蜷川裕規さん、103期
      (ラグビー部。橋下弁護士と入れ替わり)


    ▲細い路地奥の店舗ながら常に行列が絶えない


    ▲焼きそばも逸品もの


    ▲お好み焼きは自分で焼くのが大阪流


    ▲秘伝の自家製マヨネーズ


    ▲あつあつを召し上がれ


    ▲店主の蜷川さんは六稜ラガー

    Last Update: Jan.19,2007