六稜トークリレー【第36回】 「いのちの言葉」道浦母都子さん@78期 reporter:太田康朗(78期)
講演要約 お母様のご病気が原因で同じ制服ではなかった事やノートが買えなかった事等で少しも楽しめない高校生活。今なら不登校かいじめの対象になりかねない状況にあって、お母様の果敢な行動とそれを冷静な態度で受け止め、さりげない対処で答えたクラブの人達。何気ないクラスメートの言葉。それらのことでいかにすくわれたことか。高校の先輩との初恋と新聞への投稿から始まる短歌との出会い。何気ない言葉が人を救い、立ち直させ、ふとしたきっかけが人を奮い立たせ、希望に向かわせる。それゆえに何事も一言も疎かにしてはならない。本格的に短歌の道に進んで出会った様々な言葉。戦犯で刑死した木村久夫さんの残した短歌『音もなく我より去りしものなれど書きて偲びぬ明日という字を』を「きけわだつみのこえ」で読んで、短歌は心の叫びを託すことのできるものであることを教わった。色々な新聞の読者投稿欄の選者をして思うのは高齢者と農業従事者の短歌の面白さ。何物かを突き抜けた精神の発露の素直で大胆な表現や自然と接して生活している人達の細やかな観察力は中年期の、そして都会に住む我々には到底得られないものである。そして、「いのちの言葉」と続く。対談集「いのちの言葉」は医師と3人の文人とが死を直視しての真摯な葛藤などを話し合ったものであるが、道浦さんは「死は詩」であると言う。短歌という詩型、歌をつくるという行為が人を励まし、死期が近づいた人々の心の支えになり、介護をする側の救いになる、と。ひるがえって、お母様の看病の日々、毎月一首を義務づけ闘病生活を綴る。時にはやさしく、時には厳しく、時には冷静な歌の数々。歌集「青みぞれ」の朗読の後、介護百人一首の紹介があって講演が終了した。 感想 言葉の大切さを訴えて執筆活動を続けておられている道浦さんの起源は北野高校時代にあったのだと思われるこだわりの原点を垣間見た思いがしました。また、すばらしい仲間が居たのだなあと少し誇りに思いました、今は日本語の混乱の時代だといわれているが、短歌を通じて日本語の美しさを取り戻す努力をなさっている活動の色々をお聞きして感心をしました。また、お母様の介護のご経験を踏まえて介護をされている方々の支えになる活動をされているのをお聞きして、短歌にはこのような力があるのだと再認識をしました。物静かに訴えかけるように言葉を紡いでいく道浦さんの凛とした小柄な後ろ姿には幾多の苦闘を乗り越えきた確固たる信念といまだ衰えない情熱を感じました。 |