香取由夏ピアノリサイタル
reporter:青木隆紘(114期) 香取さんは京都市立芸術大学、同大学院を修了後ウィーン国立音楽大学に進まれ、首席で卒業、今秋からさらに同大学院で研鑽を積まれるそうです。またヨーロッパのコンクールにも数多く入賞されています。 コンクールで評価されているだけあり、その安定した技術にはため息が出るほどでした。演奏も素晴らしく、力強い一つ一つの音、曲の構成を深く理解したうえでのオーケストラのシンフォニーようなダイナミックな山場作りと表現が印象的でした。特にそれはスクリャービンやシューマンの終楽章などで生きていたと思います。その他意地悪なほどコロコロと曲想が変わるベートーヴェンなど、聴き所が沢山ありました。 聴きに行かれた同窓会の皆さんも多いと思われますが、聴かれた方は次の機会にも、また、まだの方は是非機会があれば香取さんの演奏に耳を傾けていただきたいと思います。 さて、このリサイタルでは珍しい曲が演奏されました。北野高校を戦前に卒業した作曲家・橋本国彦の作品です。橋本国彦は東京生まれ大阪育ちの多彩な音楽家で、ポピュラーなものから前衛的なものまでの幅広い歌曲、日本国民楽派とも言うべき交響曲、フランス風のピアノ曲、微分音などを使用した実験作品をものした他、ヴァイオリニスト、指揮者、東京音楽学校(今の東京藝術大学)教授として教育者としても八面六臂の活躍をしていました。私は橋本国彦の作品に、北野出身の大先輩ということもあり、注目しておりまして、公の場で演奏されることを常々願っていたわけですが、今回のリサイタルに際し、香取さんから、何か日本人の作品を演奏したいけれど、どうせやるなら北野の先輩である橋本国彦の作品に取り組みたいので何かいい曲を推薦してほしい、とのご連絡をいただきました。そこで、今回演奏された「雨の道」を含む「鏑木清方の三枚絵の印象による三部作(雨の道、踊り子の稽古帰り、夜曲)」の楽譜をお送りいたしました。香取さんの素晴らしい演奏を聴かせて頂く事ができたと共に、橋本作品の演奏に関われるという念願を達成できまして、非常に喜ばしく思っております。また香取さんは、機会があれば「三部作」全曲の演奏にも取り組まれるとのことで、今から楽しみにしております。 香取さんの今後益々のご活躍をお祈りするとともに、微力ながら応援させて頂きたいと存じます。 | ||