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艸言会「2006狂言之会」 2月11日(土) 山本能楽堂 reporter:河渕清子(64期) 谷町4丁目からほど近く、街の騒音を避けるかのように竹の植え込みの瀟洒な構えの家屋。それが「山本能楽堂」だった。「艸言之会」の主宰・安東伸元氏(65期)に私淑し一門に入った三島章子さん(82期)の初舞台の会場である。 能楽堂の玄関を入ると受付があり、土間に並べられた白緒の雪駄(せった)は今では珍しいが、さすがこの場の雰囲気にぴったりする。受付を過ぎ向い側の引き戸を開けると、桟敷と椅子席の向こうには檜の「能舞台」が奥深く広がっている。こじんまりとした昔の芝居小屋を思わせるようなこの能楽堂は何処となく温かみに包まれていた。客席には六稜応援団?の奥田氏(58期)新原氏(65期)和田さん(81期)栗原さん(73期)のお顔も見えた。 12番の狂言のうち、三島さんは7番目の「昆布売」の大名役で登場。謡曲のたしなみがお有りの彼女は、さすがに発声も本格的で、烏帽子、直衣、長袴の重衣装を身にまとい、大小刀を腰にした三島さん、とても初舞台とは思えないほど堂に入ったもの。身分は高いがお人よしの大名役をよく演じられていた。ただ、喜怒哀楽の表情の変化など、もっと誇張してたっぷり演じられたらいいのに…と思ったのは欲張り過ぎた注文だろうか? ともあれ、狂言は歌舞伎や能のように鳴り物もなければ床の語りもない。台詞だけが行き交う舞台を出演者の精神力と体力で保って行くことの大変さをあらためて痛感した。お聞きすれば、三島さんが安東師匠の門を叩いたきっかけは「トークリレー」で安東氏に出会ったことに起因するとか。「トークリレー」が六稜の絆を深めるのにも役立ったのは嬉しい。今後とも、益々芸道に精進されて立派な舞台をまた披露して頂き私たちを楽しませてほしいものである。プログラム最後の「番外狂言」としてご出演の安東伸元師匠の「鈍太郎」を拝見できないまま、思いを残しつつ能楽堂をあとにした。 ※狂言【昆布売】のあらすじ ある大名が供を連れずに外出する。そこへ通り掛かった昆布売に太刀を持たせることにするが太刀を持ったことがないので上手く持てない。大名の指導の下、やっと上手く持つことができ、仮初めに主人と太郎冠者という間柄になるが、昆布売はあまり面白くない。そこで大名の隙を見て、手にした太刀を抜き、大名に切りかかる。両者の立場は逆転、大名は命乞いをするが、昆布売は大名に昆布を売らせることにする。その売り声も小歌節や平家節、浄瑠璃節、踊り節などでやるように様々な注文をつける。大名は初めは嫌がるが段々楽しくなって踊り出してしまう。散々もて遊んでおいた挙句、昆布売は太刀を持ったまま逃げて行く。「やるまいぞ、やるまいぞ」と大名が追っかけながら幕。弱かった昆布売りが優位に立ち、大名が段々調子に乗って昆布を売るようになるところは、如何にも狂言らしい展開である。 |