高木和弘 無伴奏ヴァイオリンリサイタル 10月26日(水)+31日(月) ザ・フェニックスホール reporter:河渕清子(64期) パガニーニと同じ誕生日という高木和弘さん。その前日の誕生日に奏でられた曲は「バガニーニ:24の奇想曲」だった。フェニックスホールでの第一夜である。 ステージをぐるっと取り囲むように設けられた満席の客席には、ヴァイオリニストのブレスノイズも伝わるようで、音楽を身近に感じてほしいという演奏者の意図も汲み取られ好感が持てる。 高木さんはレンガ色の赤いシャツに白のズボンのコスチュームで、弦と指であやつるビッチカットなど高度の技巧を必要とするこの至難の曲を、殆ど休憩なしで全曲を弾き終えた。ドイツのヴュルテンベルグ・フィルのコンサートマスターとして活躍中の32歳の無謀ともいえる快挙である。 「無伴奏曲」のイメージからは想像できなかったような美しくダイナミックな演奏ぶりは圧巻、聴衆を一気にパガニーニの世界に引き入れていく。激しい情熱の中に漂う知性と音楽性。彼の爽やかな微笑みと品の良さには御曹司の面影が漂っていた。 演奏会ごとに高木ファンが急激増していくのは、同じ音楽を愛する同窓生としても嬉しい限りである。 第一夜の興奮覚めやらぬ5日後の31日、私は再びフェニックスホールの客席に居た。今日の彼の上着は何色だろうか?などふっと考えてるミーハー的な自分が恥ずかしい(ちなみに上着の色はブルーグレーでした)。 第二夜の曲目は、先ずエルンスト「庭の千草変奏曲」で始まる。懐かしいメロディをアレンジした美しい曲の中に、ここでもビッチカットが冴えていた。西村朗作曲の最新作ソナタ第二番「霊媒」をはさんで、最後は得意とする「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番」。輝きのある美しい音色は、聴く人に希望とやすらぎを与えてくれるようだった。 二夜の演奏を終えた後の高木さん、鳴り止まない拍手に応えて幾度もステージに上がり爽やかな微笑で満場を魅了、短いメッセージの後待望のアンコール曲演奏となる。ホール窓辺のブラインドも上げられ、街の夜景をバックに聴く曲は「バッハ:無伴奏ヴァイオリンソンタ第2番第3楽章“アンダンテ”」だった。 今後とも、高木さんの益々のご発展・ご活躍を期待しています。 |