六稜NEWS-050702
    六稜ト−クリレ−【第21回】
    「最新デジタル映像のすべて」
    大村皓一(68期)さん


    reporter:山崎 純(112期)

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      北野時代に柔道部で汗を流した私は、柔道部OB会長の大村皓一先生が講演されると知り、初めて六稜トークリレーに足を運んだ。

      大村先生は日本におけるCG研究のパイオニアで、大阪大学工学部助教授であった1970年代の後半からCG映画の世界に関わってこられた。まだパソコンがほとんど普及していなかった当時、まずコンピューターの環境を整えることから始めなければならず、既存のコンピューターを何台もつなぎ合わせるなどして自作されていたそうだ。

      80年代には「ゴルゴ13」やドームシアターのOMNIMAX映画に携わってこられた。企業から億単位の研究資金を得て、研究室の大学院生とともにCG製作に励むという刺激に満ちた日々だった。ただ当時は「いくら頑張っても、CGは写真に追いつけないのではないか」という思いを常に抱えておられたそうだ。CGが高度に発達して広く普及した現在から見れば信じられない気もするが、それが先駆者であるがゆえの悩みだったのだろう。

      その後、大村先生の関心は後進の育成へと移ってゆく。今回最も印象的だったのが、「『才能』は体のいいゴミ箱」という言葉である。CGを含めたアートの分野においては、若い人間の作品の出来不出来を「才能」・「センス」といった言葉で安易に説明して、議論を放り出してしまうことが多い。しかしその分野をより進歩させるためには、むしろ作り方を徹底的に議論することで基本的なノウハウを確立し、若い人間の成長を助けることが大切だということである。
      講演の後半ではイチロー選手の打撃フォームを大村研究グループの再現CG映像によって解説して頂き、非常に興味深かった。これも、メディアにおいて「天才」の一言で片付けられがちなイチロー選手について客観的な分析を行うことで、野球界の選手育成に貢献したいという大村先生の思いから生まれたCGなのであろう。

    Last Update: Jul.16,2005