中村高之©2004(「陸奥制作日誌」より) |
reporter:清藤浩之(89期)
中村高之©2004 |
※同じ海兵68期の、松永市郎氏の「思い出のネイビーブルー」(S52海文堂出版)に、田中先輩のエピソードがありました。海兵時代、休日には江田島の近隣の民家がクラブと呼ばれる、生徒たちの懇談や食事の場にされていました。そのクラブで、クラシックのレコードを聴いている級友に、松永氏が「歌のない、前奏だけの流行歌か。つまらんレコードはやめろ」と言い、級友は「そんな事では、教養ある女性と結婚は出来ないぞ」と言った所です。
と一気にしゃべり、さらにジェスチャーを交えながら言葉をついだ。 『音楽というものは、ある楽器が最初から最後まで鳴りっぱなしということはない。鳴るところと鳴らないところが交互にやってくる。ということは、音楽は間を利用している訳だ。だから鑑賞にも間を利用する。レコードが鳴っている間は、軽く両眼を閉じて、静かに首を前後に振って、如何にも感に堪えないとの風情を示す。しかしこの動作は余り重要ではない。ポイントは鳴り終わってからの動作である。終わったからと急に両眼を開けてはならない。後から眼を開けた人が、なんだこの人きょろきょろしているなあと思う。だからと言って、いつまでも眼をつぶっていると、なんだこの人居眠りしているのかと思われる。そこでだ、レコードが鳴り終わったならば二呼吸半して、やおら両眼を開け首を右か左にちょっと曲げ、「いいですねえ」と一言言え。余計なことを言えばボロが出る』 (中略) 田中は大阪の北野中学出身で兵学校でも優等生だったが、物事のポイントをつかむのがとても上手だった。 |