reporter:谷 卓司(98期)
9月4日から10日まで、京阪百貨店守口店のアートサロンで「酒井優行油彩画展」が開催された。酒井氏は81期。一大決心をして25年間の公務員生活に自ら終止符を打ち、洋画家へ転身した…というユニークな経歴の持ち主である。
そもそも氏と絵画の接点は学園紛争時代。あの東大受験が行われなかった1969年に、京大工学部に入学を果たし、約半年間、自宅待機という異常な状況での学園生活を始められたそうである。それまで絵画など全く興味もなく過ごしてきた彼が、この半年という「有意義で無駄な時間」のおかげで、独学で油彩画を学び、高槻市美術展市長賞や大阪日曜画家展知事賞などを受賞するに至ったという。大学院終了後も、大阪府庁に勤務するからわら、二科展、関西独立展、関西国展などに入選を果たしていたが、本職の公務員ワークが予想をはるかに超えたハードなものだったので、いつしか筆を置かざるを得ない状況に追い込まれてしまった。
数年前、地元の画家のアトリエに通うようになってから、若き頃の絵画への情熱が再びふつふつと湧きあがってきたそうである。そうして2001年3月、一念発起で大阪府庁を早期退職したあと、すぐにスペイン旅行に旅立ったという。このとき取材したスペインの田舎の風景が、しばしば彼の作品のモチーフになっているようだ。その風景画には、どこか心理的で謎めいた気配が漂っている。
また、「花」や「静物画」も得意とするようで…写実的でありながら夢想的な趣も同時に内在する作風は、画家の陶酔感やナイーブな側面を伝えるのに十分な雰囲気を醸し出している。とりわけ「花」については、油彩画というよりもむしろ日本画的な要素が随所に見うけられた。
2年前に彼の地元である高槻西武美術画廊で洋画家として初の個展を開催。翌年には銀座の画廊で、また今年の5月には新宿三越で個展を開催しているほか、ホームページを活用したバーチャル・ギャラリーも、そのクールなインタフェースは特筆に値する。今後の活躍に期待したい作家の一人である。