Reporter : 谷 卓司(98期)
|
今年の出色は縦縞のワンピース。フランク・ステラのミニマルアートをも彷彿させる、吸い込まれるような藍の濃淡が織りなす、規則正しい縞模様は展示フロアでひときわ色彩を放っていた。紳士ものではチェックの手織り半袖シャツが目を引いた。
初日とあってか、小物も含め選り取り見取りの品揃えであったが、目当ての作務衣は既になかった。聞けば、一足先に開催された東京会場で出てしまったという。
「工場を使って機械縫製すれば商品は大量にできる。けれども、それでは沖縄の宝物<美ら藍(ちゅらえ)>にならない」と上山は敢えて「手作り」に拘り続ける。
亜熱帯の原風景が残されたヤンバルの森の中、オーシッタイの大自然で育まれたキツネノマゴ科の琉球藍は、清らかな水と、蜂蜜、泡盛、木灰を加えられ、丁寧にじっくり発酵させて作られる。化学薬品を一切使わず、伝統的な技法に拘り続けた結果が、世界一美しいと言われる琉球藍染めの「青」を生み出しているのだ。
贅沢な自然の素材をふんだんに利用した「ホンモノの逸品」は、今後も量産される予定はない。そんな希少価値にも、ささやかな「豊かさ」を見出したいと思った。