一曲ごとに、門さんの解説を含んだお話が織り込まれながら演奏が進んで行くのも、普通のクラシックコンサ−トには見受けられない温かな雰囲気だった。
客席もほぼ満席で、この日の六稜コンビの演奏を聴きに来られた六稜クラシックファンもあちこちにお見受けした。お顔も知らない老紳士が「いやぁ、二人とも北野の後輩なんですよ」と話して居られるのを耳にして嬉しい思い…。
最初プログラムを見た時から「ヴィヴァルディとバッハ」ばかりでは退屈するのではないか?の私の懸念も何処かへ飛んで行ってしまうほどの好演で、指揮暦30余年の門さんの的確・明快な指揮のもと、高木さんのヴァイオリンも冴え、その濁りのない輝きのある音色からは、知性とほのかな潤いが伝わって来るようだった。客席からの鳴り止まない拍手に応えての笑顔も初々しい。
2曲のアンコ−ル演奏後、先輩門さんは後輩高木さんと喜びを分ち合うかのようにがっちり肩を組んでステ−ジに立たれた。音楽によって再燃した六稜の熱き絆がここにもあったのだ。客席の六稜OB生の感動も一入だったと思う。
終演は9時過ぎ。
満ち足りた気分でホ−ルをあとにする観客たちに、小雨もやさしく降りそそいでいるようだった。
門 良一さん(70期) わが国では数少ない本格的室内オ−ケストラである『モ−ツァルト室内管弦楽団』を1970年に設立。レパ−トリ−はモ−ツァルト、ハイドンを中心とした古典派からバロック、前期ロマン派に及び、最近ではフランス近代の作品にも手を伸ばすなど、氏の意気込みが感ぜられる。 関西を主としての演奏活動だが、隔年に東京での定演や海外への演奏旅行など、内外の著名なア−ティストとの共演でも成功をおさめている。また1991年にはモ−ツァルト記念合唱団を誕生させ、1993年には堺シティオペラとの協力で“モ−ツァルト・オペラシリ−ズ”を開始、好評で迎えられている。京都産業大学教授(物理学)。 | |
高木和弘さん(103期) 1997年「エリザベ−ト王妃国際音楽コンク−ル」入賞を皮切りに、数々の国際音楽コンク−ルで受賞後、数多くのオ−ケストラの客演コンサ−トマスタ−を努め、2002年11月よりヴュルテンベルク・フィルの第一コンサ−トマスタ−に就任。日本でも幾つかの室内アンサンブルのメンバ−として活躍中。今後益々活躍を期待されている若手ヴァイオリニスト。 |