一つ上に戻る 六稜NEWS-020728
     
     

    第20回『七ニ八の日ィ』総会

    reporter:河渕清子(64期)



      今年で第20回目を迎えた『七ニ八の日ィ』の総会が、6年振りに日曜日となった7月28日17時半より谷町6丁目の薬業年金会館4階の大会議室で和気あいあいの“なにわム−ド”で始まった。

      この会の代表世話人は六稜WEB“なにわことば三昧”連載でお馴染みの中井正明さん(64期)。白地のTシャツに“なにわことばのつどい”と染め抜いた白手拭いを半被の衿もどきに首から掛けたスタイルでキマッテいる。

      来賓に三島佑一氏(60期、四天王寺国際仏教大学名誉教授)。レギュラ−ゲストには日本ペンクラブ会員の井澤壽治氏、童話作家の藤田富美恵氏など多才な顔ぶれ。

      三島佑一さん

      井澤壽治さん

      藤田富美恵さん


       
       
       
      『第1部』は辻良樹・島田淳子の両世話人による軽妙なトークで来賓・ゲストの紹介など。島田さんの浴衣姿が印象的だ。
      『第2部』は「おこしやす!大阪辯たんねて300里パ−トII」と題して、埼玉の新成人との再会。10年前に招いた埼玉の子供たち(当時5年生)が、それぞれ20歳を迎え、自主的に連絡を取り合って大阪での再会の約束を果たした。当時の担任の先生とともに集まった新成人は15人。大学生あり、OL、俳優、看護婦、美容師、競艇選手など…青春真っ盛りの元気一杯な若者たち。なにわの人たちとの再会に感動して涙ぐんで声をつまらせる光景もあったりで…純な若者の気持に触れて会場の皆も心が洗われる思いだった。ずっとお世話をされた中井正明さんに対し、新成人からお礼をこめての花束贈呈で第2部は終了した。

      『第3部』は本日のメイン「大阪辯の誤用・悪用を正す〜そんなこといわしません特集」が、友成光吉氏(なにわことばのつどい顧問)の司会のもと、諸先生方のお話に会場参加者の声も交えて真剣な討議が繰り広げられた。取り上げられた言葉は次の通り。

      1)まったり
      「牛車(ぎっしゃ)でまったり」
       ……朝日新聞朝刊(H13.12.5)一面

      「まったり まったり まったりな いそがず あわてず まいろうか」
       ……NHKこども向けアニメ「おじゃる丸」(月〜金)主題歌

      ※「まったり」は味言葉で「こくが深くほど良い味加減」の意味で、味覚の最高の褒め言葉である。これを「ゆっくり」とか「慌てず」とかの意味で使っているのはおかしい。北島三郎の歌を聞いているだけだとすんなり耳に入って来る(コレが恐い!)が大阪人ならはっと疑問に思う筈だが…。

      2)おけいはん
      「京阪のる人、おけいはん」
      「おけいはんが行く」
      「おけいはんの、耳寄り情報」
       ……京阪電鉄CM(電通関西支社クリエイティブ局制作)

      原則的に語尾が「い」「え」の場合は「さん」「ちゃん」、語尾が「あ」「お」の場合は「はん」を付けてもよいが、目下か親しい人に限られる。

      3)どキレイ
      「どキレイはココロに効く」
      「どキレイ画力」
       ……EPSONプリンターのCM

      ※「ど(奴)」は侮蔑用語だから、本来は悪いものにしか付けない。
      強調語ではないから、この使い方は間違い。

      ※会場から「超弩級」という用語の指摘あり。この「弩」とは1906年に建造されたイギリス戦艦ドレッドノート号の頭字を音訳したもの。当時、画期的な巨大戦艦だったことから「巨大な等級」を表す意味で使われた(ちなみに指摘者は「電子広辞苑」を携帯されていた)。

      4)その他の間違った使い方
      「行ってお帰りい」→「行って参じます」が正。
      「食べておくんなはれ」→「食べとくんなあれ」が正。

      5)本来の大阪辯ではない「造語」
      「ど根性」……山崎豊子著「花のれん」より
      「がめつい奴」……菊田一夫
      「がしんたれ」……はなとこばこ
      「どてらい奴」……  〃

      ※2)も3)もCMとしてヒットしているのは、大阪人の耳障り感の相乗効果もあるのかも知れないが、この誤った使い方が「馴れ」になってしまわないかと危惧する。CMはともかくとして、最近、上方の若手落語家に間違った使い方をしているのに出会うが、もっと勉強してほしい。
      現在「悪い言葉」ばかりが「大阪辯」として残って行く傾向で、“はんなり”とか“こうと”とかいった「美しい言葉の大阪辯」は殆ど使われなくなっている。やわらかな美しい語感のファ−ジ−な大阪辯を皆で使い合って伝えて行きたいものである。皆さんものご家庭でも、おばあちゃんの言葉を孫に伝えて行く気持を忘れないでほしい…と締めくくった。

       
      「使いまひょ」「広めまひょ」「伝えまひょ」こそが、なにわことばのつどいのモット−だという。最後に会場全員で『道頓堀行進曲』を愉しく唱和したあと、正調「大阪手打ち」で締め、賑やかにお開きとなった。

      ※なお、当日の模様は読売テレビ(10ch)「ニュ−ススクランブル」(月〜金/18:18〜19:00)にて近日放映される模様です。お見逃しなく。


    Last Update : Jul.29,2002