戻る 初めに戻る つぎ われら六稜人【第44回】平和構築の現場で
第7幕
リベリア紛争と選挙支援

リベリアのある村にて
リベリアのある村にて

私にとって2度目のPKO参加となったのは西アフリカの国、リベリアした。そこでの任務についてお話したいと思います。コソボの背景説明はちょっと深入りし過ぎた気がしていますので(笑)、リベリアに関しては背景部分はさらっとだけで、仕事の部分を中心にお話しさせていただきます。

リベリアは西アフリカにある人口約350万人の国です。「Liberia」と書く通り、その国名は「Liberty(自由)」からきていまして、米国からの解放奴隷がアフリカに戻って来て、19世紀に建国した国です。近年の内戦は政府と反政府組織との紛争ですが、ベルリンの壁が崩壊した1989年から断続的に約14年間続いて、双方と市民合わせて約25〜30万人の犠牲者が出たと言われています。2003年にようやく政府と反政府組織との間で和平合意が結ばれましたが、この合意の中に、国連に対してPKOミッションの派遣を要請するくだりがありまして、求めに応じて安保理はUNMIL(UN Mission in Liberia、国連リベリアミッション、ウンミルと読みます)の設立を承認、派遣しました。私はそのUNMILの選挙支援部の研修教育課で仕事をすることになりました。

選挙スタッフのトレーナーを育成
選挙スタッフのトレーナーを育成

「選挙」の仕事と聞くと、大抵は「選挙監視」のことだと思われるのですが、私が関わったのは「選挙支援」の方です。選挙支援とはどういう仕事かと申しますと、リベリアの選挙管理委員会と一体となって選挙を準備してゆく仕事です。投票日の1年半も前から準備を始め、国際スタッフも200人を超える一大オペレーションです。

選挙支援部は大きく3つのセクションに分かれています。オペレーション課、ロジスティック課、そして研修教育課です。オペレーション課は全体管理を、ロジ課はハード面を、研修教育課はソフト面を、という役回りです。私のいた研修教育課は選挙の実施マニュアルをつくったり、それを使って選挙スタッフへのトレーニングをやったり、市民教育の方法を企画したり、フィールドでの実施状況をモニタリングしたりするのが主な仕事でした。

生活の方はコソボに比べるとある意味快適でした。トロピカルなところなのでずっと暑いことは暑いのですが、マイナス20度の冬よりは楽ですよね。首都モンロビアでさえ電気と水道が復旧していない状態でしたし、休みの日などは海に出かけるしかないので、ほとんど毎週末泳いでいました。

ヘリコプターで地方へ
ヘリコプターで地方へ

地方はほんとうに首都から切り離れてしまっていて、道もひどいですし、車で行くと何日もかかってしまうので、出張はUNの定期ヘリコプター便で行っていました。熱帯雨林のジャングルの上を飛ぶのは本当にダイナミックで、美しさに見入ってしまいました。

しかし、車で行けないようなところにまで投票箱を持っていって選挙を実施することに、果たして意味があるのかどうか、という議論があります。ジャングルの山奥に「デモクラシー」を掲げて入って行く訳です。どう思われますか?

戻る 初めに戻る つぎ Update : Jul.16,2010