福井栄一
@97期
『小野小町は舞う〜古典文学・芸能に遊ぶ妖蝶』
ISBN: 4-88591-951-7
単行本・169p・19cm
東方出版(2005/8)
¥1,680 [税込]
河渕清子(64期)さん
Sep.7,2005
小野小町は平安前期に活躍した三十六歌仙の一人だが、美人の誉れ高い彼女の生涯は様々な言い伝えが有り謎に包まれている。その小町伝説は文学、彫像、絵画、歌舞伎・能の舞台芸術の世界にまで及んでいるが、王朝の一女性像として現代人の目からも魅力的存在と云えるだろう。小町に恋し、100夜通えば夢を叶えてやると言われ、99夜目に哀れ急死した深草少将との話「通(かよい)小町」、そしてその深草少将の霊にとりつかれ老後は哀れな末路をたどったとされる「卒塔婆小町」など、いわゆる「七小町」のエピソ−ドを、様々な文献に基づいて紹介しながら、更に芸能にみる小町の世界に触れ、小町の“実像”を探ろうとしている。口承伝説も多い小町を書くに当たって、福井栄一氏は約200冊に上る参考文献を使っていることも、小町への慕情が氏を駆り立てたのかもしれない。「花の色はうつりにけりないたずらに わが身よにふるながめせしまに」と世の無常を嘆いた小野小町。彼女を彩る伝説の奥行きの深さを実感させる1冊だ。
Last Update : Sep.7,2005