わたい
中井正明
(64期・なにわことばのつどい代表世話人)
- この話“わたい”に任しトイトクなはれ。
滅相悪い様には、せえしまへんそぉかオォキニ。ホナ“わたい”も助かるワ。
一つ宜敷ゥ頼んどくでえ
元気のエェ浪華の町は誰もが“わたい”を連発してました。
“私(わたくし)”の典型的な転訛で、
男:わたくし→わたし→わたい→わい・わし。
女:わたくし→わたし→わたい→わて・あて…
となる変化。
短絡化の段訛り・行訛りで、険のない浪華詞でヤス。
“私”の意は七ツあり、次の解釈が主体。
『代名詞。話し手自身をさす語。
現代語としては目上の人に対して、
また改った物言いをするのに使う』。
六代目松鶴の使た“わたい”が
一番印象的だしたなぁ。
今、上方落語の若手の喋る「僕が僕が…」は
ドダイ気障過ぎダ。
この「僕」は大正時代の学生“新語”で
何程、学士の咄家が増えたカテ
「僕」では、上方芸の示しがつかぬぞ。
コラ、もっと勉強せえ。顔洗テ出直して来い。
とは一寸我が儘キツ過ぎるかナ?
Last Update: Nov.23,2002