【連載】なにわことば三昧(33)

うきよしょおじ

中井正明
(64期・なにわことばのつどい代表世話人)

    艶めいた地名は日本中に仰山おまス。
    大阪にも通称“浮世小路”在り。
    ご存知のお方も未だ未だおいなはる筈で。
    浮世離(ばなれ)のこの呼び名から一寸だけ。船場の中心高麗橋通と今橋通の間に一間半程の小路、
    市内地図にも名前の載らぬ通路がある。
    昭和も35年頃の家並は本(ほん)にしっとりした景色で、
    静かなF喫茶店などポツポツとお店がおました。
    今日日(きょうび)エライ、様変りしてしもて。

    文献によると
    「船場に小路四所(ところ)有りて云々。
    淀屋小路・衣張小路・御前小路と此所(ここ)、
    他に狐小路も…」ゴザッタとか。

    17世紀後半の寛文・享保の頃は、小路両側に
    質屋・売卜・寺子屋・米屋・風呂屋・油屋・色宿まで
    軒をあらそひ、家建ち集ひ、
    実に浮世のありさまを眼のあたりに見わたす
    の故をもって浮世小路と唱へたるよし…とかや。

    他に「ここを手代の隠し宿又は問屋蓮葉の身ままになりて…云々」
    の記述がおまス。これなど直訳?すると
    「高級料亭を使わず、別宅を利用して尻軽に接待等させる」
    即ち…その分、交際費の節約に通じるという事、
    一口に言うと、船場の商人達は始末人倹約家が多かったんやてぇ。

    筆者が月給取りの頃、別家(べっけ)番頭に承った事
    この話「イカイ」昔話になってもたねぇ。

Last Update: Sep.23,2002

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