のりやのかんばん
中井正明
(64期・なにわことばのつどい代表世話人)
- 昭和の御代も華やかなりし時、15年頃の話。洗濯糊を四斗樽に詰めて、量り売りする御商売がゴザッタヨ。
大方はお婆様が居て小遣い稼ぎ?と思えたが、
お店の看板は大層立派な代物で、
欅(けやき)か榧(かや)の厚板に彫った仮名。
仰(そもそも)デッカイ「の」文字の隙間に、
細(コンマ)い「り」文字を入れた物(モン)だした。
大坂商人はこの図柄…「り」が細い(=利が少ない)を
洒落て、儲けの少ない場合に多用した。
最近どないだす?
イエ皆目だすワ、まるで糊屋の看板だァ
本眞(ホンマ)だっかいな!
テナ会話になっていたようでして、
顧(かえり)みると、本(ほん)に太閤さんの辞世
「つゆとおち つゆときへにし わかみかな
なにわの事も ゆめの又ゆめ」
そんな情景が泛(うか)んで参りまんなあ。
Last Update: Aug 23,2002