エロマンガ島(ニューヘブリデス諸島) |
若い人たちというのは非常にマンガが好きなんです。フランス人もアメリカ人もとにかくマンガが好きで、マンガ家なんかが文化の担い手として喜ばれている。ところが、ある地方へ行きますとマンガというものが無いんですね。
これは非常に驚いたんですが…以前、マンガ家の仲間と一緒に東南アジアからポリネシアのほうへ旅行したことがあるんです。これは本当の話なんですが、そこにエロマンガ島という島があるんですよ。別にエロ・マンガの島じゃあないですよ。そういう名前の島が本当にフィジー諸島の近くにあるんです。そこへ面白がって観光に行ったんです。
すると観光案内人がやって来て「あなた方は一体、日本から何の商売でみえましたか。バイヤーですか」と聞くわけです。「いや、そうじゃない。われわれはマンガ家だ」と言うと、「マンガって何ですか」と首をかしげるわけですね。いわゆる英語でいうcartoonですが…「What is cartoon???」ってなわけです(笑)。
ちょうど僕たちの仲間に富永一朗というマンガ家がおりまして『チンコロ姐ちゃん』というマンガを描いていましたが、彼があんまり馬鹿にされたような気がしたのか、そのチンコロ姐ちゃんを紙にスラスラと描いて見せたんです。「これがマンガだ」と。そうすると、その人…こうやってじーっと見ていて「これは一体何ですか?」と言うんですね。「『何だ?』って…これは女じゃないか。こんな面白いマンガ、知らないだろう。俺たちはこれを描くんだ」って富永一郎が自慢するわけです。すると「これが女ですか?女はこんな変な顔をしてないよ」と言うんです。これはもうマンガを全然知らない人達の話です。実際そういう人がいるんです。まだ世界の中にはいくらでもいるわけです。
そうかと思うと…スペインのマドリッドへ僕らはマンガのグループとして行ったわけですが、お揃いの旅行カバンに「MANGA」とローマ字で書いて持って行きました。そうすると「あぁ、来た来た」とみんな歓迎してくれる。だけど、向こうの人達と話をしているうちに、どうも話がおかしい。よく聞いてみると「皆さんは日本のカバン屋さんでしょう」と言うんですね。
「MANGA」と書いたお揃いの旅行カバンのせいで、カバン屋の集団だと思ったらしいですね。まあ、そういうこともありますが「いや、実はcartoonのことを日本語でマンガというんだ」と言ったら「あぁ、そうですか」と言ってカバン屋さん以上に歓迎してくれました。
そういうふうに国によってマンガというものを認めている国と認めていない国とがあります。